巨人が首位攻防戦で痛い黒星を喫した。8月22日の広島戦は1-0とリードした9回一死二塁で広島・小園海斗が同点打を放ち、延長10回二死二・三塁の場面で矢野雅哉が左前に勝ち越しのV打。巨人は3連戦を1勝2敗で負け越し、ゲーム差は再び2に広がった。
巨人先発の戸郷翔征は8回まで散発3安打無失点の快投で、9回を抑えれば2018年の菅野智之以来、6年ぶりの3試合連続完封勝利…のはずだった。
ところが9回、先頭の野間峻祥に左前打、犠打で一死二塁とされると、小園に中前への同点打を許して無念の降板。まさかの同点にショックを受けたのか、ベンチで茫然とする戸郷の姿が見られた。
まさかの逆転負けに「なぜ9回に大勢を出さなかったのか」「戸郷の3試合連続完封を優先するあまり…」などと、阿部慎之助監督の継投策に疑問符を投げかける巨人ファンは多かったことだろう。
阿部監督は「タラレバ言ってもしょうがないのでね」と試合を振り返ったが、元広島で野球評論家の大野豊氏の見解はこうだ。
「戸郷は序盤にスライダーが普段より多かった印象だった。直球にも威力があったし、フォークはベース板にしっかり落としていたから、見極めが難しかった」
同じく野球解説者の谷沢健一氏はというと、
「完封にこだわりすぎたと思う」
との考えを示しながら、
「結果論だけど、9回の頭から大勢でいった方がよかったかなと思う。ちょっとチームの勝ちを優先しなかった点に付け込まれた」
阿部監督の迷いに苦言を呈したのだった。
巨人は広島との直接対決を6試合残しているが、全て鬼門となるマツダスタジアムでの対戦となる。ここまでマツダスタジアムでは1勝4敗と大きく負け越しており、厳しい状況だ。
2007年の日本シリーズでは、中日・落合博満監督が完全試合目前の山井大介に代えて守護神・岩瀬仁紀を送り、物議を醸した。山井の指にできたマメが潰れたとはいえ、イニング頭からスパッと岩瀬に代えた落合監督の決断には今も賛否があるが、情を優先するのではなく、あくまでもチームの勝ちにこだわる落合イズムに、唸ったファンは少なくなかった。
阿部監督の勝利への執念に物足りなさを感じた巨人ファンは多かったのではないだろうか。
(ケン高田)