いまやアイドルにとって決して夢舞台ではなくなった日本武道館。昨年は、BABYMETALや私立恵比寿中学、でんぱ組.inc、9nineなど、まだ知名度が全国区でないアイドルグループまでも、普通にライブを開催している。とはいっても、キャパ1万4000人の大箱だけに、本当に採算がとれているのだろうか。音楽制作の経験を持つ芸能プロ関係者は、「武道館? 間違いなく赤字ですよ」と断言してこう続ける。
「武道館クラスの会場だと利用料は1日500万円以上。さらにセットを組むための設営日も必要で、設営日は半額程度で借りられますが、それでも会場費だけで1000万円近くになりますね。意外に大きいのが場内整理などの人件費。武道館クラスの大会場だとライブ当日には100人以上、設営日でも数十人のスタッフが必要です」
さらに、ステージの設営や音響設備にも大きなコストがかかる。しかも最近はステージにセリや奈落を作ったり、2階建てにしたりと、演出はどんどん派手になっていく傾向にある。
「たとえば、大会場ライブには欠かせない大型スクリーンは、画質鮮明なLEDスクリーンだと1日で数百万円以上になります。さらにその日だけ公開するスペシャル映像の制作費、レーザー光線や炎の演出といった特殊効果など、コストはいくらでも積み上がっていきます」(前出・芸能プロ関係者)
こうやって積み上げられた制作費は、数千万円台は当たり前。時には“億”に達することもあるとか。それに対して、チケット収入にはおのずと上限があるため、ライブ単体で採算を合わせることはかなり困難だ。
「モーニング娘。を擁するハロプロのように集客力があれば、採算をとることは可能でしょう。しかし、多くのアイドルは武道館を満員にできないのが現実。関係者を大量に招待して、なんとか空席が目立たないようにしていることもあります」(アイドルライター)
一方で、「MDまで含めれば、トントンから黒字になるケースも少なくありません」と語るのは、大手レコード会社の関係者だ。
MDとはマーチャンダイジングの略で、すなわち物販のこと。大会場ライブでは売り上げが数千万円から数億円に及ぶことさえあり、人気声優の大型ライブでは、客の列が会場の周りを一周し、ざっと10億円を売り上げた例もあるとか。これなら商売としてもなかなか旨みがありそうだ。
とはいえ、なかにはやはり赤字となるライブもある。この場合は所属事務所が宣伝費として計上するのが一般的なようだ。前出のレコード会社関係者がコッソリ教えてくれた。
「あるライブの赤字が1本だったと聞いて、『ベンツが買えちゃいますね』と言ったら、違ったんです。一軒家が買えるほうの1本だったそうです」
開催するほうも、一か八かのギャンブルのようだ。