ドジャース・大谷翔平のスパイクといえば、8月にお披露目した、愛犬がプリントされた「デコピン・スパイク」だ。これを履き始めてからの盗塁成功率は、なんと100%。7月22日のジャイアンツ戦の1回、第一打席に四球で出塁した際に二塁への盗塁を失敗したのを最後に、今季最終戦まで36連続盗塁を記録した。
そして公式戦最終カードのロッキーズ戦で登場したのが、「2代目デコピン・スパイク」だった。
大リーグでは2023年シーズンからピッチクロックとともに「事実上、牽制は2回まで(実際の制限は3回まで。3回目で牽制アウトにできないとボーク扱いで走者進塁)」という、投手に不利なルールが追加されている。
さらに今年8月のレイズ戦で大谷に死球を与えた敵軍ラブレディ投手はその後、妻や子供の殺害予告、ネットアカウントのハッキング被害にまで遭っている。相手バッテリーには大谷への牽制で失投はできないと無言の「圧」がかかっているから、ルール改正前に引退したレジェンド、イチローと大谷の盗塁成績を比較するのはあまり意味がないだろう。それでもリハビリ中の今季、59盗塁、成功率93.7%は異世界の記録だ。
偉大な記録を駆け抜けた初代デコピン・スパイクは、永遠に大リーグファンの記憶と記録に残る。9月19日のマーリンズ戦で記録した50本塁打、50盗塁の達成時にも履いていたスパイクは、アメリカ野球殿堂博物館に送られた。
記念ボールはご存知の通り、オークションサイトでいきなり1億円以上の入札があったものの、スタンドインした際の観客による争奪戦をめぐって、フロリダ州の裁判所で係争中。所有権の行方は不透明だ。
殿堂入りした初代スパイクに代わり、プレーオフ前に大谷の足元にやってきた「3匹目のデコピン」は、舌を出して笑っているように見える。公式戦最終盤に新しいスパイクを新調するのだから、これはもうワールドシリーズ優勝を意識したデザインなのだろう。
大谷が渡米後、プレーオフに残るのは今季が初めて。昨年の今頃は、右肘手術後の痛々しい姿で報道陣の前に現れた。
2冠となる54本塁打、130打点と大暴れした公式戦の疲れが出る頃で、新デコピン・スパイクは、経験したことがない世界の頼もしい相棒となりそうだ。
ドジャースは1988年を最後に、ワールドシリーズ優勝から遠ざかっている(新型コロナ影響下の短縮シーズンを除く)。2代目デコピン・スパイクで悲願の世界一を達成、殿堂入りした初代の横に展示される…なんてできすぎた展開も、「漫画 大谷翔平」にかかれば許されるだろう。
(那須優子)