上戸彩が出演する丸亀製麺のCM「すべての店に、麺職人がいる 秋篇」が不評だそうだ。上戸が豪快にうどんをすすり、満足そうに頬張るものだが、この「音をたててすする」姿が「ヌーハラ」だということらしい。
「ヌーハラ」とは「ヌードルハラスメント」の略で、「麺類をすすってズルズルと音をたてる行為によって、猫舌の人や、麺類をすすって食す習慣のない外国人に不快感を与える」ということらしいが、気にしたことのない人間からすれば「なんだそれ?」ってなもんである。
だいたいそんなもんがハラスメントだっていうなら、落語の「時蕎麦」なんか演じられなくなるではないか。ああやって「ズゾゾゾゾ…」ってすするのが「粋」だと思っていたが、世の中どうもそうではないらしい。
そういえば、最近の若者はよく噛んで食べることが少なくなり、下顎の力が弱くなったことで麺をすすれなくなった、という話を聞いたことがある。若者ができなくなったこと、しようとしないことをメディアがなんでも「ハラスメント」と呼んで煽っているだけにも思うのだが…。
そもそも麺をすすって食べるというのは、日本の食文化のひとつだ。その国の文化にいちいち難癖をつけるのは、それこそハラスメントなのではないのだろうか。インド人がカレーを素手で食べる姿に「野蛮だ、素手ハラだ」と言うアホがいるのか、って話だ。
今、思い出したが、かつて永谷園のお茶漬けを音をたてて食べるCMも、似たような批判を受けていたような…。途中途中で入る息継ぎがイヤラシイ、みたいな声もあった。
「食べる」という行為は、食欲を満たすためのものであり、食欲とは性欲や排泄欲と並んで人間の生理的欲求、つまり人間の本能的な欲求だ。つまり、人が食べている姿というのは、見る人によっては不愉快に感じるものなのかもしれない。
逆に人前で食事をすることが恥ずかしい、という人がいるが、そういう人達からすれば、食べている姿を見られるのは、性行為を人に見られるのと同じくらい恥ずかしく感じられるのだろう。
それゆえ、音をたてて食べるなどという行為は、とんでもなくイヤらしい、ものスゴい汁まみれのハードなプレイみたいなものに見えるのかもしれない。
かと思えば一時期、話題になっていたが、「ASMR」などと咀嚼音を好んで聴いている人もいるから、世の中わからない。中には「麺をすする音はイヤだけど、咀嚼音はOK」という人もいるのだろうか。
かくいう私は、じんわりと汗ばみながら口をすぼませて麺をすする上戸彩がなんとも淫靡で、その吸引力にあらぬ妄想を抱いていたくらい。「ヌーハラ」の声にめげることなく、このまま「ズゾゾゾゾ」とやり続けてほしいものだ。
(堀江南)