自民党の小泉進次郎衆院議員が、先の衆院総選挙で大敗した責任を取って、選対委員長を辞任した。幸か不幸か、小泉氏は非公認候補に2000万円を支給していたことを知らず、決裁権を持っていなかった。
浮き彫りになったのは、選対委員長が党四役の一角と言いながらも、選挙資金には関与させてもらえなかったということだ。小泉氏の辞任には、石破茂総裁(総理)に対する抗議の意味合いもありそうだ。
小泉氏は投開票当日の10月27日夜、フジテレビの番組で、司会者とこんなやり取りを展開している。
司会「終盤戦に出た非公認の候補者に2000万円。国民は理解できなかったと思う」
小泉「そうですね。自民党だけに限らず、政党支部に対しての交付金というものは(他党も)出している。今回、自民党が問われたのは非公認候補への対応で、非公認の方でも離党とは違って引き続き支部長であり、支部の活動だということが、理解を得るのは難しかった。そこは受け止めなければならない」
司会「(2000万円の)政党交付金を配ることは、知らなかったのか」
小泉「これは選対委員長の決裁案件ではありません」
小泉氏はこの後、記者団と懇談し、次のように説明した。
「テレビでは言えなかったけど、執行部に入って驚いたのは、選対委員長って予算の権限がない。だから2000万円支給のことは全然知らなかった」
この選対委員長というポストは、2007年に当時の福田康夫総裁が選挙対策総局長から格上げする形で新設。福田氏は党則を変え、それまでの「党三役」(幹事長、政調会長、総務会長)を「党四役」とした。党四役となると、警護官(SP)がつくことになる。
初代の選対委員長は、のちに幹事長になる古賀誠氏。当初は総務会長になるはずだったが、お飾りのような存在となっていた総務会長よりも選挙対策の実務を取り仕切ることを望み、福田氏もそれを受け入れて、選対委員長に格上げして据えた。ところが小泉氏の場合、カネの差配などには関与させてもらえなかったことになる。
小泉氏だけでなく、石破総裁も実態は知らず、森山裕幹事長と事務方トップの元宿仁事務総長に任せていたことが露呈した。「裏金」問題よりも、実際にはこの2000万円問題の方が選挙結果に影響を与えたと、多くの自民党候補は憤る。
「戦犯」である森山氏と元宿氏が無傷で残るとは、自民党は組織としての体をなしていないようだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)