野田“どじょう”内閣発足から約5カ月。震災や原発問題、北朝鮮トップの死去に際しても、後手後手の対応に批判が相次ぐ。このまま日本は沈むのか?そんな国民の思いが表出した形で支持率急落中の野田佳彦総理(54)を、政治評論家・有馬晴海氏が斬る!
「ハネムーン」と言われる政権発足後の3カ月。すなわち「その間に具体的な方向性を示しなさい」という猶予期間ですが、これが過ぎても全然成果が上がらない。だから、「野田内閣に不満」という声が支持率に表れたんです。
まずは、スピードがなさすぎる。TPPだって待ったなしだと言ったけど、結局、話し合いに参加するだけと言ったあと、話題は消費税に移ってしまった。TPPについてアメリカが言う「(関税の)完全撤廃」に対して、そういう約束はしていないと言うけど、それでは「どの分野を譲らないか」など一切説明をしないまま。詰めの段階まで来ると先送りしているんですから。
震災もね、国難と言いながら、「やる気あるのか!」と思うくらいほったらかし。この冬を越せないと悲鳴を上げている人、プレハブ住まいの人たちに今どうするのか。仮に福島第一原発周辺の住民が一生戻って住めないというのが事実なら戻れる見込みはありませんとはっきり言って、いち早く次の生活を送れるように考えたほうがいいはず。期待を持たせているが、戻れる根拠はいったい何なのか。それを示さないで希望的な話ばかり。酷なことだとは思うが生殺し状態のほうが、よほどつらいことではないか。国民の一生がかかっているのだから「井戸端会議」で済む話ではないんです。政治とは国民が生活する上での仕組みを作ってあげることなんです。あとは国民ひとりひとりが考えてやっていくんですよ。
もし、原発周辺の住民が元の生活に戻れないのであれば、国の責任として詫びたうえで、次の生活を築けるよう補償金を出すことを条件に、「第二の人生を始めてください」と言えば諦めのつけようもあるかもしれません。しかし、このまま何年も生殺し状態で、結局、解決できませんでしたでは済まない。
被災された方々に故郷を捨ててくださいとは、たいへん言いにくいことです。だけど、一方で世間では、どうも戻れないんじゃないかという話が出ているのも事実。それは噂で済ます話ではなく、科学的に証明したうえで判断を下すべきで、何の手も打たない状況は政治家としては大失策です。先送りせず早く決断して、被災者の方々が第二の人生を送れる仕組みを作るのが政治なんです。その決断力が、野田総理には残念ながら、欠けていると言わざるをえません。
地震、津波、原発事故からの解決法を考えながら、一方でこの国の症例を考えなきゃいけないのは大変だけど、国を預かる以上、その決断は総理大臣にしかできないんだと肝に銘じてやってもらわなきゃいけない。
私の会った印象では野田総理は人間は悪くない。言葉も丁寧だし、菅直人みたいな逆上型でもない。しかし国のリーダーとしてどうかということになると、人柄がいいため、いろいろ配慮しすぎて決断できないという面もある。消費税にしても小沢系議員が署名集めをして出て行くみたいなことやったけど、それも党として一致できない状態を続けるのではなく、出て行くなら出て行け!とやるぐらいの決断力、実行力がないと先に進まないですよ。
昨年は震災に明け暮れたので、今年はこうしたことを踏まえたうえで、とにかく一つ一つしっかり、「早く」決断していってほしいですね。
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