読売巨人軍の前球団代表兼GM・清武英利氏(61)が、渡邉恒雄球団会長(85)を告発した内紛問題が依然くすぶっている。巨人の元ヘッドコーチで、昨年まで球団編成本部シニアアドバイザーだった伊原春樹氏(61)は清武氏の一連の言動には批判されるべき面も少なくないと指摘するのだ。
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清武さんも5~6年は野球について勉強してきたんだろうけど、知識だけの耳年増になって頭で考えて入っていく。それが怖いところでしたね。やっぱり「モチはモチ屋」。知識だけで戦えるものじゃない。
彼が不満を爆発させた、コーチ陣らの人事に関して僕の見解を言わせてもらえば、勝負に負け、優勝を逃せば、誰かが責任を取らなければならない。これは野球でもサラリーマン社会だろうと同じ。サラリーマン社会じゃ即解雇じゃなくても降格や査定に響く。一方、年契約で働くわれわれは再契約されないだけ。
それで以前、清武さんと飲んだ時、私が、
「われわれコーチや首脳陣なんて、勝てば官軍、負ければ即解雇ですから、不安定なものだよ」
って話をした。清武さんはその時、ニコニコと話を聞いていましたが、今回の騒動のあとで考えると、あの時、清武さんは、腹の中では「あんたたちはそうかもしれないが、俺は特別だから違いますよ」って思っていたのかもしれませんね。
それでも清武さんは原辰徳監督とは、球団代表として接していた頃は関係も良好で、監督室にもよく出入りして話し込んでました。ところが、昨年6月に正式にGMの肩書をもらったあたりから、ちょっとおかしくなってきた。GMと監督の考えが少しずつぶつかるようになった。
自分は現場トップであるという「自我」が表れたのかもしれない。でも言い方は悪いけど、GMの意味もわかっちゃいなかったとも思える。何だかんだ言って2年連続でリーグ優勝を逃したわけでしょう。でも上の立場である人間が責任を取らなければいけないという考えは持っていなかった。
そもそもGMとは何かと考えた時に強い権力とともに重い責任がある立場なんです。これは憶測だけど、リーグ優勝を逃して清武さんにGMを辞めてもらうという話があったんじゃないですか。それで焦ったというかガーンといろいろ走っちゃったように思えますね。
気持ちはわかります。清武さんは、もともと読売新聞社社員で、地方採用から東京本社編集局部長まで出世して、読売巨人軍というまるで畑の違う華やかな世界に来た。それも、社長は別にいるものの現場を預かるトップ。ボス的な立場になって急にチヤホヤされちゃった。地方遠征に行けば、ファンから「アッ、清武さんだ、サインください、写真お願いします」となる。こんなことは、新聞社勤務のままならありえないこと。
同じようなことが重なり、だんだん自分の立場をカン違いしてきたんじゃないかな。
そんな時にリーグ優勝を逃し立場が危うくなったので、「まだやりたいこともある。なぜ俺が辞めなきゃならない」という気持が高ぶって、コーチ人事問題にすり替えたと思えてしまう。
例の会見にしても、「コーチ人事の約束が違うので、コーチを守るため、辞表を出してGMを辞めてきました」っていうなら話もわかるけど、違うじゃない。
ところで騒動の一方の主役である、元オーナーにして現在も「最高権力者」である渡邉球団代表については、「古くからあのキャラクターで巨人軍を支えてきたんだからよくも悪くもずっとあのままでいい」という立場だ。
球団は強いオーナーがいると、選手も安心してプレーに集中できる。亡くなったヤンキースのオーナー・スタインブレナー氏も「金も出すけど口も出す」とヤユされたけど弱小ヤンキースを全米で最も資産価値のある球団にしたでしょう。
だから、オーナーでなくて、巨人軍においては、今も野球の素人が就任しているような役職であるGMの仕事というのは、その下の編成部に大勢いるプロ出身の人間の意見をもっとよく聞いて最終的に物事を決めていくのがいいでしょう。さらに、それを周りがフォローしていけば、今回のような変なことは起きなかったと思いますよ。
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