芸能

おしゃべり美女の解放区・ひと言いわせて〈川上麻衣子〉「地面師」のオジサマたちは強面でも猫ちゃん好きなんです

 アサ芸読者の皆さん、こんにちは! 川上麻衣子です。最近では「地面師たち」(ネットフリックス)の反響もあって、私が営む千駄木(東京都文京区)のスウェーデン暮らしのデザインを中心としたセレクトショップに足を運んでくださるお客様からもドラマの感想をたくさんお聞かせいただいております。ありがたいことですね。

 その「地面師たち」の打ち上げ風景がSNSでも話題となりましたが、大根仁監督をはじめピエール瀧さん、北村一輝さんらと下町飲みをしたんです。

 一見、強面がズラリと並んでいるので威圧感がものすごいことになっていましたが(笑)、実は皆さん優しいオジサマたちなんですよ。

 猫繋がりでもあって、北村さんもドラマ「猫侍」シリーズでおなじみだし、ピエールさんは猫を3匹飼っているんです。私が店で保護猫活動などをやっていることもあって、人気の猫の餌をお渡ししたら、すぐに3匹の猫ちゃんが食事をしている画像を送ってくださいました。

 あと、皆さん同世代っていうこともあって、80年代や90年代の話題で盛り上がりましたね。まさに「3年B組金八先生」(TBS系)の世代で、「観てました!」なんて言われてうれしかったですね。

「地面師たち」の中では定年を目前に控えた刑事と冷め切った妻という間柄でしたが、実のところ私、リリー(・フランキー)さんとお会いするのはこのドラマが初めてだったんです。夫婦のシーン撮影も1日ぐらいと短かったのですが、とにかくリリーさんって疲弊した生活感やなれ合った夫婦関係を醸し出すのがうまいんですよ。もう初めてお芝居をしていても、何だかずーっと昔から一緒にいた感じ(笑)。独特の雰囲気があるんですよね。

 アサ芸読者の皆さんはどちらかというと亭主役のリリーさんの気持ちがグッと胸に突き刺さる世代かと思いますが、作品を抜きにしても60代近くもなると、家に帰れば妻から煩わしがられるっていうのは結構、リアルだと思いますよ。

 仕事から疲れて帰ったら妻は先に夕食も入浴も全部済ませてさっさと寝る態勢に入っているとか、ね。仕方ないから自分で缶詰をつっつきながら晩酌とか(笑)。これは熟年夫婦によくあることらしいんですが、案外、化粧台やキッチンとかに奥さんが〝お守り〟代わりに離婚届を1枚しのばせているらしいですよ。日頃の鬱憤が募った時にそれを見て〝いざとなったら突き出してやる!〟って留飲を下げるみたいな・・・・(苦笑)。そう考えてみると、地面師より身近な妻の方がよっぽど怖いかも!?

 海外でも「地面師たち」は高い評価を受けたそうなんですが、イタリア語や英語の吹き替えで観るとすっごく面白いですよ! 特にイタリアは昔から吹き替えがうまいと言われていましたけど、本当に配役の方の特徴をつかんでいて、トヨエツさん(豊川悦司)やリリーさんとか本当にご本人がしゃべっているのかと思っちゃうぐらい声がソックリで楽しめます。

 14歳で女優としてデビューをしてから44年が経ちますが、10代の頃に巨匠と呼ばれる監督たちに出会えたことは本当に幸運だったと思います。市川崑監督の「幸福」(81年・東宝)という水谷豊さんが主演の映画では、私は実兄の子供を妊娠して堕胎後に死んでしまうというかなり壮絶な役柄だったんです。最後に血だらけになって野原で死んでいくシーンがあって、それがものすごくロング(長回し)での撮影だったんですね。市川監督からは「とにかく苦しめ、苦しめ」と言われて、ひとりっきりで野原の中で蚊に刺されまくるし、どこまでいってもカメラは遠いしで(苦笑)。

 私、「金八先生」が終わった後に1度、芸能界を引退しているんです。再デビューをした時にいきなりハードな作品でしかも汚れ役からだったので、肉体的にも精神的にもきつかったんですよね。「金八先生」では優等生の迫田八重子役だったから(笑)。そしたら母親役の市原悦子さんからこう言われたんです。

「女優っていうのは綺麗だとか清楚な役じゃなく、汚れ役をもらえるっていうことの方が幸せなのよ」って。

 当時はまったく実感がなかったんですけど、年を重ねていくうちにその言葉の深さを知りましたね。

 新藤兼人監督からも10代の頃から可愛がっていただきました。でも、「地平線」(84年・松竹)の撮影時は厳しかったですよ(笑)。

 大船の松竹撮影場で朝の5時ぐらいに入って、8時頃にスタート。私はセリフもなくて、ただ歩くだけのシーンなんですけど、リハーサルの段階で、もうアウト〜(苦笑)。

「川上さんが歩けないので皆さん、今日はお帰りください」と言って、その日1日の撮影がなくなっちゃうんです。時任三郎さんや秋吉久美子さんらなど先輩がたがスケジュールを空けて撮影に臨んでいるのに、ですよ。それで一日中、ただただ歩く練習という・・・・。

 監督は具体的な歩き方を教えてくれるわけでもなく、歩けば歩くほどどんどんわからなくなって、とにかく「早く帰りたい」っていう一心でしたね(笑)。

 あの時はつらかったし、新藤監督が求めた「歩き方」は結局、わからなかったですけれど、そういう貴重な時間をいただいたというのは本当に贅沢なことだし、感謝しています。当時は制作費も時間にも余裕があったんでしょうね。今だったら、監督が納得いかなくても撮っちゃうかも。何でもかんでも時間がもったいないっていう世の中ですからね(笑)。

川上麻衣子(かわかみ・まいこ)1966年、スウェーデン生まれ。80年デビュー。同年ドラマ「3年B組金八先生」(第2シリーズ)の出演で脚光を浴びる。10代で衝撃のヌード写真集を発売、その後「うれしはずかし物語」(88年)、「一枚のハガキ」(11年)など多数映画に出演。現在は東京・千駄木で北欧セレクトショップ「SWEDEN GRACE」を経営。

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