今オフのプロ野球FA戦線の主役となっている阪神・大山悠輔の争奪戦は、予断を許さない状況となっている。阪神の主砲として、今季リーグ2位の得点圏打率3割5分4厘という勝負強さを見せた。その力を考えれば14本塁打は少々物足りなさを感じるが、有力視されている巨人への移籍が実現すれば、狭い東京ドームを本拠地に、倍増する可能性はあるだろう。
巨人は阪神が提示した「4年総額16億円」を上回る「5年以上総額20億円超」の大型契約を準備しているとみられ、移籍先として最有力視されている。
事実、両チームのファンの関心は、すでに「人的補償」に向いている。大山は年俸上位3人に入るAランクで(今季推定2億8000万円)、移籍した場合は「人的補償+年俸の50%」あるいは「年俸の80%」が必要になる。阪神が金銭補償で新たな補強をすることも考えられるが、大山の代わりになる選手を要求するかもしれず、巨人(あるいは別の球団)にはそれなりの痛みを伴うことになろう。
仮に移籍先を巨人とした場合、問題は巨人が誰をプロテクトし、誰を外すかに興味は移る。阪神への対策を考えると、投手はしっかり守るかもしれないが、3月に支配下登録を勝ち取った若手の京本眞や、8月に1年目以来の支配下へと返り咲いた伊藤優輔などは、プロテクトの当落線上にあろう。
一方、打者を見てみると、ベテランとはいえ、さすがに丸佳浩や坂本勇人はしっかりと守られるだろう。むしろ外される可能性が高いのは、39歳の長野久義と35歳の小林誠司ではないか。
とはいえ、巨人は2018年に広島からFAで丸を獲得した際、28人のプロテクトから外れていた長野が人的補償として広島に移籍するという手痛い失敗を犯している。もし今回も長野がプロテクトから外された場合、嫌がらせのように指名される可能性は否定できないのだ。
小林は長年、これといった成績を残していないが、巨人ファンにはなぜか人気が高い選手。来季はバッテリーを組んでいた菅野智之のメジャー移籍が濃厚な上、巨人はソフトバンク・甲斐拓也の獲得を狙っている。ほかにもFA権を持った大城卓三が残留を表明していることから、はじき出される捕手が出てくるのは間違いなく、梅野隆太郎、坂本誠志郎に割って入る指導役のベテランとして、かつての長野のように指名されるかもしれない。
まだ大山が巨人に移籍するとは決まっていない以上、単なる予想合戦にすぎないが、「人的補償」となれば、誰が選ばれてもひと悶着ありそうだ。
(ケン高田)