動物の年齢を知らせる際に「人間でいうと、だいたい〇歳くらい」といった表現をよく耳にする。一般的に小動物は人間に比べ、成長スピードが早い。したがって当然のことながら、老いは早くやってくる。「犬・猫と人間の年齢換算表」(獣医師広報板)によれば、猫は生まれてから1年で人間の17歳程度まで成長し、2歳で23歳程度、3歳で28歳程度、その後は1年でおおよそ人間の4年相当の年をとっていくとされている。
全国犬猫飼育実態調査によれば、2022年時点での猫の平均寿命は15.62歳。うち完全室内飼いが16.02歳で、外に出る猫は感染症や交通事故などの影響もあり、14.24歳。とはいえ、ここ10年はペット医療の普及やキャットフードの質の向上により、猫全体の平均寿命が1.5歳ほど伸びているというデータがある。
そんな猫の中で現在「存命する最長寿猫」としてギネス記録を保持しているのが、1995年12月29日に誕生した28歳のフロッシーという猫だ。
ところが、これに疑義を唱える「事件」が発生した。今年9月、イギリス・チェシャー州で暮らすレスリーさんが飼うサビ猫のメス、ミリー(メス)の方がフロッシーより1歳上で、「ギネスに登録されていないものの、おそらくは世界最長寿猫に違いない」と複数の英メディアが報じたのである。
レスリーさんとミリーの出会いは2012年。この年、レスリーさんは妻ポーラさんと知り合ったのだが、ミリーはポーラさんの飼い猫で、彼女が1995年に生後3カ月のミリーをもらい受け、その当時はすでに16歳になっていたという。
2人は2014年に結婚。しかし「3人での幸せな生活」に突如として不幸が訪れたのは6年後、2020年のことだった。なんとポーラさんがコロナウィルスに感染し、急逝してしまったのだ。悲しみに暮れるレスリーさんの傍でミリーも食事を摂らなくなるなど、その様子に変化が見られるようになったという。
このままの状態が続けば、ポーラさんだけでなくミリーも失うかもしれない…。そう考えたレスリーさんは時間のある限りミリーに寄り添い、世話をした。するとミリーは徐々にエサを食べるようになり、元気を取り戻したという。
メディアの取材に対し、レスリーさんは、
「妻を失った悲しみの中、ミリーがいてくれたことがどれだけ心の支えになったことか。ミリーがいなければ、私もどうなっていたかわからない」
高齢のため耳が遠くなり、動きもゆっくりになったミリー。しかし、今もソファーからレスリーさん膝の上に飛び乗るほど、元気なのだとか。
「これまで獣医にかかったことはなく、健康上の問題もありません」
と語るレスリーさんは、亡き妻から託された猫を今も、実の子供のように可愛いがっている。
(灯倫太郎)