朝日新聞や日本経済新聞はネット版の「目玉」として、コメント欄を作っている。同僚記者や有識者に、記事について文字通り「コメント」してもらうというものだ。記事内容をこっぴどく批判されるリスクもあるが、まさにそれが現実になった。
作家の佐藤優氏はシリア・アサド政権の崩壊とロシアの影響力低下を伝えた12月9日の朝日新聞の記事について「3回読みましたが意味が分かりません」と断じたのだった。
朝日新聞の記事はこうだ。
〈アサド政権のあっけない崩壊は、ウクライナ侵攻が長期化するロシアに、もはや友好国の政権を軍事的に支える力がないことを如実に示した。中東を含め、国際的な影響力の低下は避けられず、大きな打撃となる可能性がある〉
これについてロシア専門家の佐藤氏は、次のように反論している。
「シリア正規軍や秘密警察の支持すら失ったバッシャール・アサド氏にこれ以上付き合う必要はないというロシアのリアリズムを反映したものに見えます」
さらには、こんな疑問を呈して畳みかけた。
「中東におけるロシアの影響力低下を示す根拠は何でしょうか?(中略)国際的な影響力の低下と言いますが、具体的根拠は何ですか?大きな打撃の可能性とは具体的にどういうことでしょうか?この記事は取材不足をレトリック(修辞)で糊塗しているように思えてなりません」
注目されるのは朝日新聞の反応だ。朝日新聞は佐藤氏が登場した「コメントプラス」について「読者のみなさんが社会の課題を深掘りし、多様な視点が得られるような場をつくることを目指し、2021年6月に始まりました」と説明している。コメント欄を設けている以上、佐藤氏の疑問に正面から答える責務があるだろう。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)