毎年、放送後に賛否渦巻く「女芸人No.1決定戦 THE W」(日本テレビ系)。結論から言うと、今年はとりわけ「ヒドイ」大会だったように思う。
A、B、Cブロックを勝ち抜いた「にぼしいわし」「紺野ぶるま」「忠犬立ハチ高」による優勝決定戦は、いずれも下ネタ。くすぐり程度に使うならまだしも、臆面もなく「ウ*コ」を連発したり、女から男へのセクハラや、官能小説を取り込んだネタを三連続で見せられ、不愉快になった。
以下、今年の「THE W」の率直な感想を。
Aブロック「ぼる塾」、Bブロック「キンタロー。」、Cブロック「エルフ」あたりに言えることだが、ある程度の知名度とテレビ露出が多い芸人の場合、こちらの期待が高く、そこそこのネタでは「こんなものか」と思ってしまう。あるいは「忙しくてネタを練る時間がなかったのかな」とも。
今年、個人的に注目していたのはキンタロー。だった。3月に松竹芸能を退社後、むしろ以前よりもテレビ露出が激増。最近も「おしゃれクリップ」(日本テレビ系)や「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)、「週刊さんまとマツコ」(TBS系)といった番組で特集を組まれるほどの活躍で、確変に入った勢いのまま爆笑をかっさらって優勝となるか、と思っていたのだった。
が、VTRで本人が「自分の得意分野が『2秒』なので(ネタ時間が)4分というところでちょっと、ずっと引っ掛かり続けてたんですけど」と語っていたように、披露したネタは、いつもの顔芸とモノマネを羅列しただけ。笑えはするけど1本のネタとしての完成度は低く、結局は紺野ぶるまに負けてしまった。
そして俄然、興味を持ったのが「もじゃ」。このピン芸人のことは全く知らなかったし、ネタを披露する前の本人写真が「飛び出るほど目を見開き、大口を開けてベロを見せる」という、往年のしゃかりき松本明子を彷彿させるうるさい顔面で苦手かも、と思っていたら…。
廃品回収の業者に扮し、家電などを見積もっては「型が古い。買い取れないよ。回収だけでいい?」と言ってトラックに積み込み、その流れで妻、子供、飼い犬などまで回収していく。ストーリー性もあり、予想に反して面白かった。
さらにそのビジュアルとともに、思わず「型が古い」と真似して言いたくなるほどのインパクトを与えてくれて「こりゃ、とんだダークホースだぞ」と興奮を覚えた。が、結局のところ「にぼしいわし」に負けてしまい、2本目のネタを見ることは叶わず。
審査委員の講評はというと、アンガールズ・田中卓志は「負けたけど、十分に得してるなと感じた」。さらば森田哲矢も「もじゃさん、めちゃくちゃ面白かったんですけど」とベタ褒めしていたが、2人とも票を投じたのはなぜか「にぼしいわし」だったという矛盾。
あとで調べてわかったのだが、この「もじゃ」の所属事務所は「ソニー・ミュージックアーティスツ」なのだ。ソニー芸人といえば、バイきんぐ、錦鯉、ハリウッドザコシショウ、アキラ100%、やす子、コウメ太夫といった賞レースチャンピオンや、売れっ子ばかり。
まさかとは思うが、「これ以上、ソニーの芸人を優勝させて、のさばらせてはアカン」という思惑が働いた…などということはないだろうか。その結果、フリーの「にぼしいわし」が優勝したなどということは…。
それにしても、下ネタ連呼で賞金1000万円ゲット。男性芸人がこんなものをやったら即炎上モノだが、女性コンビなら称賛されるというのもおかしな話だ。女芸人にとって、こんなオイシイ大会はない。
(堀江南/テレビソムリエ)