「さようならが、あたたかい」でおなじみの、さがみ典礼のテレビCM。先代のCMキャラクターだった左とん平が亡くなった2018年から、加藤茶がそのあとを継いでいる。
加トちゃんといえば、2011年に45歳も若い女性と再婚。世間はそんな彼女を「どうせ財産目当て」と決めつけ、白い目で見ていたように思う。
おまけに加トちゃん自身が急にやせ衰え、言語不明瞭になったものだから「まさか一服盛られたか」などと心配したが、もちろんそんなことはなく、加トちゃんの体調が回復して元気になり、ほっとしたものだ。
昨今は夫婦揃ってバラエティー番組に出演する機会が多く、その際に加トちゃんの口から「妻・綾菜の献身的な体調管理のお陰で調子がいい」といった話がよく出る。結婚当初に浴びた世間からの誹謗中傷が全く見当違いだったことも明かされた。それどころか、加トちゃんのために介護福祉士の研修を受けたり、生活習慣病予防アドバイザーなどの資格を取得するなど、献身的に支えていることで、世間の評価は一変、その良妻ぶりが称えられるほどに。
2004年にいかりや長介が亡くなり、2020年には志村けん、そして2022年には仲本工事と次々と他界してしまい、ザ・ドリフターズで残ったのは加トちゃんとブーさんだけになってしまった。加トちゃんは自身の名前に因んで「茶寿(108歳)まで頑張る」と意気込みを語っており、ドリフで育った身としては、是非ともそこまで生きてほしいと願っている。
ところが、だ。最近、そのさがみ典礼の最新CM「宝物みたいな日常①/綾菜さんの視線」篇にモヤモヤするのだ。加トちゃんと妻・綾菜が一緒に出演しているのだが、その演出がどうも…。
「もしチータンと結婚してなかったら、一日一日をこんなに大切に生きられなかった気がする」
そんな綾菜の言葉が流れる中、ソファで目を瞑って横になっている加トちゃんの顔を綾菜がつついたり、マフラーか何かのフリンジで鼻のあたりをこすったりすると、加トちゃんが起き上がって「ヒッ、キシッ!」とお約束のくしゃみ。最後に「いつかくるお別れは笑ってしたい」というテロップが映るのだ。
一見すれば、仲良し夫婦が戯れているようにも見えて微笑ましくもあるが、見方を変えれば、近いうちに起こりうる加トちゃんとの別れを想起させ、なんとも腹が立つ。
思えばドリフのコントでも、葬式や人の死を笑いに変えてきたのだから、そんなに本気で捉えるほどのことでもないかもしれないが…。
「いつかくるお別れは笑ってしたい」などと言わず、加トちゃんには「ちょっとだけよー」ではなく先にあの世に行ったメンバーの分も長生きして、しっかり茶寿まで笑わせ続けてほしいのである。
(堀江南/テレビソムリエ)