香取慎吾と上沼恵美子がMCで、今年亡くなった有名人を偲ぶ「星になったスターたち」(12月17日、フジテレビ系)を見た。正直言って「追悼」の名目で視聴率を稼ぐようなやり口は、あまり好みではない。が、VTR中に映る上沼の顔が無表情すぎて「私、この人のこと嫌いやったんですよ」とか言い出すんじゃないかと気になり(残念ながら、そういうことはなかった)、ついつい最後まで見てしまった。
おすぎとピーコの「ピーコ」、西田敏行、中尾彬、曙…。そんな面々が取り上げられる中に、1月に亡くなった演歌歌手の小金沢昇司も。喉用スプレー「フィニッシュコーワ」のCMで有名になった、あの「歌手の小金沢くん」だ。
彼の在りし日の想い出を語っていたのは、兄弟子の山本譲二だった。ともに北島三郎の愛弟子であり、「北島音楽事務所」に所属した、北島ファミリーの一員だ。
その後、2人とも事務所から独立しているが、在りし日の思い出を話す山本譲二だが、話よりも着ているジャンパーの胸元からチラチラ映り込むTシャツが気になって仕方がなかったのだ。あれはメタルバンドSLAYERのバンドロゴではないか、と。それもおそらく彼らの名盤である3rdアルバム「Reign In Blood」のジャケットがプリントされたやつだ、と。
ちなみにSLAYERとは、ヘヴィメタルの中でも、特に速さと重さに特化したサブジャンルの「スラッシュメタル」において「帝王」と呼ばれるバンド。METALLICA、MEGADETH、ANTHRAXらと並び「スラッシュ四天王」と称されるレジェンド中のレジェンド・バンドだ。
そんなSLAYERのTシャツをなぜ山本譲二が? 不思議に思って調べたところ、山本のマネージャーが独断で進めた「山本譲二メタル化計画」なるものの一環だった。 第一弾としてメタル風Tシャツ(ロゴはIRON MAIDEN風)が作成されると、これが一部でバズり、さらに第二弾は、吉幾三が作詞作曲したメタル風の楽曲「言論の自由」を、吉とともにシャウト。同曲は山本のデビュー50周年記念シングルのボーナストラックとして収録された、ということらしい。
演歌はもとより、最近はメタルの世界の動向にも疎くなっていたので、そんなことになっていたとは、まるで知らなかった。
かねてから元MEGADETHのマーティー・フリードマンや、音楽評論家の伊藤政則なんかが、メタルバンドのバラード曲や、ゲイリー・ムーア、マイケル・シェンカー、ウリ・ジョン・ロートといった名ギタリストによる、ギターソロにおける「泣き」のメロディーを引き合いに、演歌とメタルの共通点や親和性を語っていた。企画としてはありだ。
たとえ弟弟子の追悼番組でも、メタル魂を貫き通す山本譲二、最高!
(堀江南/テレビソムリエ)