12月1日の早明戦を激闘の末に勝利し、関東対抗戦の1位で「大学ラグビー選手権」に準々決勝から参戦するのが早稲田大学だ。2025年1月13日の決勝戦に向けて、圧倒的な優勝候補に挙げられている。
対抗馬には同じく対抗戦グループの2位・帝京大学と3位・明治大学、そして関西大学リーグで優勝した天理大学だろう。
ところで、大学選手権には早稲田大学が属する対抗戦以外に、関東大学リーグ戦の上位3大学が参戦している。とはいえ、2位の東洋大学は12月14日の3回戦で、対抗戦で早帝明にまるで歯が立たなかった慶応大学(対抗戦4位)に大差で敗れ、同じく3位の東海大学も明治大学に33点差をつけられ、敗退した。
かつては関東でしのぎを削った、この2つのグループの格差拡大。「大学ラグビーがヤバイ」という声が聞こえ始めているのだ。
1980年代後半から90年代前半にトンガ旋風を巻き起こした大東文化大学が隆盛を極め、90年代後半から2000年代は関東学院大学が選手権を6度制するなど、関東リーグ戦所属の大学がラグビー界をリードしてきた。
東海大学は選手権優勝こそないが、現日本代表のリーチ・マイケルらを擁して選手権9連覇と無敵状態だった帝京大学に最も肉薄した大学として、その後のリーグ戦を引っ張ってきた。
ところがここ数年は、リーグ戦の大学が選手権の準々決勝以降で勝利することは稀になり、今年に至っては惨敗の連続。12月22日には今シーズン1位の大東文化大学が関西2位の京都産業大学と対戦するが、下馬評では不利の予想。このままでは関東リーグ戦はまた、選手権で未勝利に終わってしまう。
なぜここまで力の差が広がってしまったのか。スポーツライターの分析はこうだ。
「2009年の選手権制覇を機に、対抗戦グループの帝京大学が無双状態となり、ファンやOBの多い早慶明が低迷期に突入すると、大学ラグビーの人気が急降下しました。それではマズイと感じたのでしょう。数年前から早明が選手のスカウトに本腰を入れ始めたのです。すると、かつてなら関東リーグ戦の大学に進学していたであろう有力選手まで、対抗戦の人気大学に進学する傾向が顕著になった。頼みの留学生は有力どころが、関西で力を伸ばしてきた京産大などへ進学するように。もともと地味で人気が高いとはいえなかった関東リーグ戦の低迷はそうした流れから始まり、止める方法がないのが実情です」
しかし、数年前から著しくなってきていた格差が、今シーズンになって声高に叫ばれるようになったことには「日本代表監督のエディー・ジョーンズにも原因がある」と、前出のスポーツライターは力説するのだ。
「今年はエディーが現役大学生を代表に招集したことが話題となりました。しかし、呼ばれたのは早大を中心とした対抗戦上位の大学、そして京産大あたりまで。スカウト力の強さで獲得した選手が多く、彼らが代表合宿でスキルやパワーをアップさせて大学に戻ればどうなるかは歴然。例えば、早大の2年生FB(フルバック)の矢崎由高は、代表戦ではまだまだ課題が山積みですが、一流選手に揉まれてきたおかげで、大学生レベルのディフェンスでは止められなくなっている」
代表を強くさせなければ競技自体が盛り上がらないが、人気面で劣る大学がそのアオリを食っているのだとしたら、競技そのものの衰退につながりはしないか。
ファンが「限界だ」と声を上げ始めたグループ格差の是正は、ラグビー界にとって急務なのである。
(高木莉子)