これは演出の範疇なのか、それとも…。
1月5日に放送された「ウルトラマンDASH 2025冬SP」(日本テレビ系)の「駅伝ミッション」に「疑惑」が持ち上がった。
この企画は青山学院大学陸上競技部のメンバーと、TOKIOの城島茂やSUPER EIGHTの横山裕らDASHチームがたすきをつなぎ、並走する列車とどちらが先にゴールできるかを競うもの。2023年と2024年の新春にも放送されたミッションで、この時は群馬と栃木を走るわたらせ渓谷鐵道の列車が相手。今年は場所を変え、富士山麓電気鉄道の富士急行線で行われた。三つ峠駅をスタートして寿駅、葭池温泉前駅を通り、下吉田駅まで全長5.8キロのコースである。
変更にあたり番組が強調したのは、これまで以上の難敵であるということだった。気動車だったわたらせ渓谷鐵道より、電車の「富士急行線6000系」の方が「最高時速が前回の1.5倍の60キロも出る」とアピール。青山学院大学の原晋監督も「厳しい」と、富士急行線との戦いを危ぶんだ。
さらに番組は「列車が実際の運行をする」と再三アピール。競争する車両は一般の客は乗車できない、勝負のための特別列車であることは明かしたが、運行そのものは通常と同じであると強調したのである。
時速60キロの電車が相手では勝負にならないのではないか…そんな懸念があったが、青学は5人の選手のうち、今年の箱根駅伝に出場したランナー4人を揃え、いい勝負を繰り広げた。結果は19秒差で列車の勝ちとなったが、十分に健闘したと言えるだろう。
しかし、この手に汗握る戦いが番組によって仕組まれたものではないかと、鉄道ライターは疑っているというのである。
「6600系が時速60キロを出していたのはほんの一部だけで、コースの大部分でゆっくり走っているように見えました。その証拠に、実際の運行では三つ峠駅の発車から下吉田駅の発車までちょうど10分ですが、番組では15分59秒もかかっているんです。三つ峠駅から寿駅の間で『この場所は本来、天気がよければ富士山が楽しめるビュースポット。通常運行どおり電車は速度を落とします』とアナウンスが入り、列車が徐行したのですが、普通列車が減速するのは体験したことがありません。実際の運行とは違うのではないでしょうか。ちなみに観光客を乗せる特急では、徐行することがあります」
停車時間も実際とは違っていたと、この鉄道ライターは指摘する。
「寿駅で『通常運行どおり』として2分間の停車をしましたが、実際は長くて30秒。葭池温泉前駅でも1分間停車しましたが、こちらも実際は20秒から30秒程度ですね。なぜこんなに停車時間を取ったのでしょうか」
実際の運行と同じだと6分もの差がついてしまい、勝負にならないため、このような策を取ったのだろう。そうであるならば「実際の運行」とは謳わず、「対決用の特別運行」とすべきだった。実際の運行とした時点で、この鉄道ライターがヤラセを疑うのも無理はないのだ。
TOKIOは以前にも電車との競争で、過剰演出を疑われたことがある。2007年に放送されたゆりかもめとTOKIOの競争で、駅に車両が入線したことを表す映像にあったのが別の車両だったことで、ちゃんと通しで競争せずツギハギしたのではないか、という疑惑が持ち上がったのだ。実際はちゃんと競争していたのだが、入線映像に関してはツギハギだったため、これは過剰演出ではないかと指摘する声が出たのである。
これに対し、日本テレビはホームの映像が別の車両だったことは認めたが、通常の演出で編集の範囲内であると回答している。今回の「ゆっくり走行」と「謎の停車時間」もそうなのか、見解を聞いてみたいものである。
(鈴木誠)