空気が乾燥する冬季に頻繁に起きる災害に、火事が挙げられる。この年末年始にも、各地で悲惨な案件がニュース報道された。年数が経った木造住宅や住宅密集地での火災の危険性がしばしば取り上げられるが、ここにそれとはまた違った背景を持つ火災事案がある。
1月10日正午、沖縄県那覇市辻のアパートで発生した火災で、60代の男性が死亡した。建物の3階から煙と炎が上がり、通行人が通報。警察と消防が駆けつけたが、火が完全に消し止められるまでに約2時間を要した。男性は心肺停止の状態で救出され、本島南部の病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。
現場となった辻は那覇市の中でも特殊浴場が多く立ち並ぶことで知られるエリアだが、近年は一人暮らしの高齢者が多く住む地域となっている。地元事情に詳しい男性は、今回の火災について次のように指摘する。
「辻周辺には古い建物が多く、ひび割れが目立つ物件が少なくありません。沖縄の住宅は台風対策でコンクリート造りが基本ですが、この地域の古い建物はひび割れ部分から空気が入りやすく、火が燃え広がりやすい構造です。特にこの時期の沖縄は風が強いので、火の回りがいっそう早くなった可能性が高いですね」
古い木造建築ではなくコンクリート造りであっても、条件によっては燃えやすくなるのだ。
現場付近に住む高齢者の中には、不安を口にする人が少なくない。
「近所で火事があったと聞いて怖い。自分が住む建物も古いので、火事が起きたらどうなるかわからない」
那覇市辻の火災は、高齢化が進む地域における建物老朽化の問題を浮き彫りにした。特に沖縄特有のコンクリート住宅の弱点であるひび割れや、強風の影響による火災拡大のリスクは無視できない。
今回の火災を受け、地域住民の安全を確保するためには、老朽化した建物の火災対策を進めることが急務だ。高齢者の単身世帯への支援を含めた、地域ぐるみの安全確保が求められるゆえんである。