円安の影響で海外旅行より国内旅行を選ぶ人が増加する中、国内旅行の人気エリアである沖縄県で「異変」が起きている。県内随一の繁華街である那覇市松山のキャバクラ店が、近年まれに見る閑散とした状況に陥っているのだ。
「とにかくお客さんが少ないんです」
と嘆くのは、とあるホステスだ。
松山には30店舗以上のキャバクラ店がひしめいており、リゾートアルバイト感覚で、県外から働きに来る女性キャストも多い。しかし、現在はその活気が失われつつあるという。
この異変の原因について、松山で夜の店の案内を行う男性は、次のように事情を語るのだ。
「いちばんの理由は、沖縄のホテル料金の値上げです。現在、那覇市内のビジネスホテルは1泊1万円から1万5000円が平均価格となっています。コロナが落ち着き始めた頃はまだ手頃な料金で、出張中のサラリーマンが経費で松山に遊びに来ることが多かった。ところが料金高騰により、会社経費が夜の遊びに回らなくなった企業が増えているのです」
その結果、以前は接待や個人出張で利用されることが多かったキャバクラ店に、出張客の足が遠のいているというのだ。いや、理由はそれだけではなかった。この男性が続けて言う。
「せんべろ系居酒屋の人気上昇も一因なのではないかと思っています。この数年で沖縄には、せんべろ系居酒屋が一気に急増しました。3杯で1000円程度という激安価格が観光客に大人気です。そのため、県内在住の男性客もせんべろ居酒屋に集まり、観光客をナンパするケースが増えている。以前は内地から来た女性が働くキャバクラ店が地元男性の間で人気でしたが、最近はせんべろで安く女性と知り合えることもあり、足を運ぶ若者が減っていますね」
せんべろ文化の定着とホテル料金の高騰が、那覇の繁華街を苦境に立たせているとは…。かつて観光客や出張者で賑わった松山の夜は今や、静けさを増すばかりだ。沖縄の夜の観光産業は、この新たな時代の波にどう対応していくのか。早急にその答えを出すことが求められている。