先頃、東京都は記録が残る1985年以降で最速の1月8日からスギ花粉が飛散し始めたと発表。さらに日本気象協会の25年スギ花粉飛散予報では近畿から九州にかけて昨年比で2倍以上、全国レベルでも東北地方以外は過去10年の平均より多い飛散量と見込まれているという。
どうやら花粉症持ちの人は例年よりも長くつらい〝戦い〟を強いられるのが確実な情勢だが、果たしてこの苦難にどう対処すべきか。医療ジャーナリストの村上和巳氏は「最新の花粉症対策でも、花粉との接触を減らすセルフケアと治療薬服用の古典的な方向性に変更はありません。これを今まで以上に徹底するしかありません」と強調する。
特にセルフケアは思いのほか抜け落ちているポイントだという。
「外出時にマスクなどで防御しても、帰宅時に何もせず家の中に入ってしまう人が実は少なくありません。シーズン中は衣服や髪・皮膚に花粉は付着しているので、玄関に衣服用ブラシなどを備え付けて外で十分払い落さないと屋内でも症状に悩まされます」(前出・村上氏)
シーズン中は洗濯物・布団の屋外干しも避け、部屋干し・布団乾燥機使用を徹底すべきだとも。
一方、治療は抗アレルギー薬などの内服や点鼻剤の使用となるが、村上氏は、「飛散量が多いと見込まれる今シーズンは、より早めの受診が肝要です。2021年以降、一部製薬企業の製造での不祥事で、今も花粉症治療薬の一部を含む全医薬品の2割程度の供給が不安定です。今シーズンの患者の増加次第ではこれが加速するからです」と警告する。
医薬品不足について、薬剤師で実務薬学総合研究所代表取締役の水八寿裕氏はこう分析する。
「薬の種類を選ばなければ供給不安は回避可能と思いますが、喘息治療でも使われる一部の花粉症治療薬は現状でも供給不安定なので要注意。これに巻き込まれないためにも、やはり早めの受診がお勧めです」
特に今シーズンから発症した人は異変を感じたらすぐに受診すべきだという。
「診断確定から自分に合う薬が見つかるまで一定の時間がかかるからです。花粉飛散ピークの2月中・下旬の初診では耳鼻科も混雑し、これが難しくなります」(前出・水氏)
また、耳鼻科での混雑回避の有効策が「リフィル処方箋」の活用だ。リフィル処方箋は、22年春に導入された制度で、決まった薬で症状が安定している人は、医師が定めた期間内に1枚の処方箋を最大3回まで繰り返し使える仕組みである。これを使えば、3回の受診を1回に減らすことができる。
「毎年同じ主治医に同じ花粉症治療薬を処方してもらっている人はぜひ一度医師にリフィル処方箋の使用を相談してほしい」(前出・水氏)
また、前出・水氏によれば、意外と知られていない安価な花粉症対策もあるようだ。
「薬局で買えるワセリンです。目の周りや鼻の穴の入り口に塗ると、目や鼻の粘膜に接触する花粉の量を減らせて、かなり楽になります」
何につけても〝先んずれば花粉を制す〟ということのようで─。