2024年から2025年にかけての年末年始は、カレンダー通りだと「9連休」。ところがこの年末、インフルエンザ患者数が先週比2倍と急増し、リンゴ病(伝染性紅斑)やマイコプラズマ肺炎の流行は、過去10年で患者数が最多となった。発熱患者向けの診療予約は、診察最終日まですでに埋まってしまっているクリニックもある。この冬は市販の解熱鎮痛剤のお世話になる機会が増えるかもしれない。
厚労省は公式サイト上で「市販の解熱鎮痛薬の選び方」を案内しているが、これが実に不親切で「どの成分が含まれる市販薬を選べばいいのか」の最適解を書いていない。それどころか、欧米やオーストラリア、ニュージーランドでは販売禁止となっている、危険な成分が含まれる解熱鎮痛剤まで紹介している。
日本以外の先進国で発売禁止になっている成分は、次の2つだ。
①ブロモバレリル尿素
②アリルイソプロピルアセチル尿素
いずれも鎮静効果があり、不眠症の治療薬に含まれている成分である。そうとは知らず、車のドライバーがこれらが含まれた市販の解熱鎮痛剤を飲んでしまうと、運転中に強い眠気に襲われて事故を引き起こすおそれがある。睡眠中に呼吸を抑制する作用や常習性、依存性もあることから、欧米では販売禁止となった。
では年末年始、急に熱が出た時に、安全な市販薬をどのように選べばいいか。ドラッグストアの薬剤師に「眠くなる成分が入っていないか」を確認するか、外箱にブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素という成分名が書かれていない商品を選びたい。
解熱鎮痛剤の中で副作用が少なく、安全性が高いといわれる有効成分が「アセトアミノフェン」だ。ところがアセトアミノフェン配合の市販薬にも、アセトアミノフェンのみ配合、アセトアミノフェンとそのほかの有効成分を配合、アセトアミノフェンとプロモバレリル尿素配合があり、実にややこしい。しかも商品名に「プレミアム」とついた値段の高い市販薬ほど、プロモバレリル尿素が含まれていたりしており、値段が高いから「いい薬」であるとは限らない。
テレビCMでよく効く「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」も解熱鎮痛効果は高く、これらを日頃から飲み慣れている人なら問題ないが、妊娠中や高血圧、心臓病のある人、腎機能が落ちた人には使えない。
「ロキソプロフェン」を15歳未満の子供に飲ませるとインフルエンザ脳症を引き起こす恐れがあり、子供への投与は禁じられている。もし妊婦や乳幼児が9連休中に発熱した場合は、オンライン診療などを有効活用してほしい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)