日ごとの寒暖差が激しい季節の変わり目は、シニア世代にとっても体調を崩しやすい時期である。当然、薬を服用する機会も増えるのだが、日常的に口にしている食材やサプリとの組み合わせによっては、薬が「毒」に化けてしまう。時には、死を招く“食べ合わせ”となることもあるのだ。ぜひとも、服用の前に以下の記事をご一読いただきたい!
「お薬手帳」は持っているけど、面倒なので活用していない。そして、医師から処方された薬を受け取る際の薬剤師の説明はうわのそら。他に薬を服用しているわけでもないし、薬袋に書いてある用法と用量だけを守っていれば、病気は治るだろう──。
そう思っている諸氏は、みずからの健康だけでなく、命さえも危険にさらしている可能性がある。
複数の薬を服用することで、薬の効果が消えてしまう、逆に効果が必要以上に強まってしまうことは広く知られている。この相互作用と呼ばれる現象は、薬と食品でも発生する。そして、昨今ではサプリメントなどの健康食品の普及で、薬と食品の「危ない食べ合わせ」は複雑になっているのだ。
まずは、食事として一般的に口にする食品から見ていこう。納豆は日本の伝統的な発酵食品として健康にいいと言われている。
ところが、心筋梗塞などを患った人が血を固まりにくくする薬であるワルファリンカリウムを飲んでいる場合、納豆を食べると、この薬の作用を弱めてしまうこともありうる。納豆に含まれるビタミンKがその原因だ。
ビタミンKは納豆以外にも含まれている。
薬剤師で医薬情報研究所株式会社エス・アイ・シーの医薬情報部門責任者の堀美智子氏はこう話す。
「ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜にもビタミンKは含まれますが、納豆菌が腸内でビタミンKを合成してしまうため、野菜に含まれる量とは比較にならないほどです。どうしても納豆を食べたい人は他の薬に変更してもらうのも一つの方法です」
ちなみに、健康食品などに含まれるナットウキナーゼの摂取も避けるべきだ。
次に、酒の肴として重宝されるマグロやブリなども、ある薬との相性が悪い。抗結核薬のイソニアジドである。
厚労省は「日本はいまだ結核蔓延国」としており、11年の統計では2万2000人以上が発症している。内訳は新規患者の多数を70歳以上のシニア世代が占めているのだ。しかし、結核となれば隔離される。そうなれば、食事は病院食となり、まさか危険な食べ合わせと遭遇することはないと思われるが‥‥。
「結核病棟で出された食事にブリがあって、大騒ぎになったことから、この相互作用が判明したと言われています」(医療関係者)
魚の鮮度が落ちれば落ちるほど、ヒスタミンが増える。たとえ、薬を服用していなくても、魚を食べる時は鮮度がいいものを選ぶに越したことはない。
通常の食生活で最も要注意なのがグレープフルーツだろう。高血圧や狭心症などに用いるカルシウム拮抗薬が代表的な例だが、他にも相互作用が起きうる薬がある。
「片頭痛治療薬のエレトリプタンもグレープフルーツとの相互作用が懸念されています。他にも多くの薬の作用に影響することが知られているので、グレープフルーツやそのジュースが好きという方は薬を受け取る際に確認してください」(堀氏)
原因となるフラノクマリン類の作用は3~4日間続く場合もある。服用期間中は摂取を控えたほうがよい。同じ柑橘類でもスウィーティーや文旦は影響が出るが、オレンジや温州みかんは影響がないという。服用中にどうしてもグレープフルーツが食べたい場合は、後者で代替すべきなのだ。