右肘痛やコンディション不良などの故障に苦しんでいたヤクルト・奥川恭伸が、復活の狼煙を上げている。
2月9日の実戦形式の打撃練習では、今キャンプで初めて打者と対戦し、直球の最速は150キロを計測。スライダー、フォーク、カットボールなど全球種で空振りを奪い、順調な仕上がり具合だった。
復活のきっかけとなったのは、左手にはめられた真っ赤な「相棒」だ。奥川は昨年9月、インスタグラムを閲覧中に「特殊重心」を謳うグラブを偶然に発見。すぐに店舗に電話をし、所在地の兵庫県西宮市に出向いて購入した。なにやら聞き慣れないグラブだが、重心を従来のグラブと異なる位置にすることで体のバランスが整い、より高いパフォーマンスを発揮できるという。
店のサイトでは、奥川が購入した「舞」の刺繍が施された硬式右投げ用のグラブが6万6000円で販売されており、「はめるだけで球速が上がる謎のグローブ!!まじで速くなった…」という動画では、実際に4~5キロ球速がアップする様子が紹介されている。
はめるだけでパフォーマンスが上がるとはなんとも不思議な話だが、昨年の阪神ドラフト2位・今朝丸裕喜が報徳学園時代に試合で使用していたことがある。
奥川は2022年に右肘を痛めた際、トミー・ジョン手術の可能性が報じられたが、最終的に保存的療法を選択。翌2023年を丸々リハビリに費やすことになった。プロがグラブメーカーとアドバイザリー契約するのは珍しくないが、インスタグラムで紹介されていたグラブを自ら購入するというのは、かなりのレアケース。試せるものは何でも試してみたいという奥川の、危機感のあらわれと言えよう。
この店ではポケットに入れておくだけで体幹力や可動域、回復力がアップするという「シール」も販売されており、もしかすると奥川のユニフォームのポケットに忍ばせてあるかもしれない。
奥川のグラブには懐疑的な声も上がるものの、今季、見事な成績を残せば結果オーライだ。「運命の出会い」に大きな期待を寄せてみたい。
(ケン高田)