昨年の「M-1グランプリ」で惜しくも準優勝に終わった「バッテリィズ」。ネタ中でも審査員とのトークでも発揮された、エースの「天然もの」といえる「アホな言動」は、審査員の若林正恭(オードリー)が「ワクワクするバカが現れた」と評した通りで、「M-1グランプリ」の放送時からSNSでも大きな話題になった。かく言う私も、エースの「作為をいっさい感じない純粋すぎるアホなキャラクター」に魅了されたひとりだ。
2月9日放送の「ボクらの時代」(フジテレビ系)にはそのエースと高比良くるま(令和ロマン)、伊沢拓司(クイズプレイヤー)の3人が出演。ともに30歳の同い年だ。片や東京大学卒の伊沢、片や慶應義塾大学中退のくるまに挟まれたエースは「東大卒であることの凄さ」や「東大と慶応の違い」すらも把握していない様子だった。
そんな中、バッテリィズのネタ中のエースの発言に関し、くるまが「学問の始まりみたい」と表現すると、
伊沢「ここから始まっていくんだ、発見って。『なんでリンゴっておちてくるんだろう』っていうところじゃないですか」
くるま「でも、あのネタは、エースさんが素直に思ったことだったりするんですもんね。ウケようと思って作ってるというよりかは」
エース「そうそう。全然おもんないですよ、だから僕は。だから『笑われて』るんですよ。『笑かして』るんじゃなくて」
伊沢「でも楽しいんですよね」
エース「笑ってくれているという楽しさだけです」
なぜ自分がこんなにもウケているのかわからない、という感じだったのだ。
翌日、これと似たような場面に遭遇した。それは「あさイチ」(NHK)でのこと。この日の特集は「ブロッコリー」で、その栄養価や美味しい調理の仕方などが紹介される中、ゲストの平野レミが11年前に同番組に出演した際に「レンジでチンしたブロッコリーを丸ごと皿の上に立てて、たらこソースをかける」という料理を作り、のちに「伝説」と呼ばれるまでになったことを持ち出された。
「私さ、あれが伝説になったのが不思議でさ。CMにもなっちゃったりとかしてさ、さっぱり訳わかんないのよね」
そう語る平野は「自分はいたって普段と同じことをしているだけであり、どうして笑われるのかわからない」という姿勢。これって自分たちのネタを「全然おもんないですよ」と言うエースと全く同じではないだろうか(平野レミが「アホ」と言っているわけではない)。
テレビはおバカタレントのおバカな発言や振る舞いを楽しんでいるが、彼らはあくまでもキャラ。そのわざとらしさがどうも好きになれなかったが、エースもレミもホンモノで、何にも臆せず、偽ることも誇張することもない「素の自分」を出している。だからこそ元気をもらえるんだなと、妙に納得したのだった。
(堀江南/テレビソムリエ)