スマホひとつで気軽にスロットやルーレットなどの賭け事に興じることができる─。今や海外のオンラインカジノサイトが日本社会を揺るがしている。
1月20日、東京五輪卓球男子団体で銅メダルを獲得した丹羽孝希がオンラインカジノによる賭博容疑で書類送検。2月に入り、吉本興業所属の人気お笑いコンビ「ダイタク」の吉本大と「9番街レトロ」のなかむら★しゅんが同様の容疑で警察から事情聴取を受けたことが判明した。
警察OBは「オンラインカジノを利用した著名人の摘発が注目されていますが、これらは氷山の一角。国内での利用者が300万人を超えるとの推計もあり、今後さらに摘発が増えるのではないか」と語る。
オンラインカジノ愛好家の間では「自分も捕まるのでは」と戦々恐々とする者が続出。弁護士事務所が運営する掲示板には相談が殺到しているのだ。
オンラインカジノ蔓延の背景について、ITジャーナリストの奥田恭平氏が解説する。
「海外では合法でも日本国内で利用すればどう考えても賭博行為なのですが、利用者の多くが違法だとは知らずに手を出してしまっています。オンラインカジノ業者は現金を賭けない『無料版』を提供することでハードルを下げているんです。『無料版』の広告塔として起用されている有名人の影響も少なからずあるでしょう」
海外大手オンラインカジノ「BeeBet」無料版は元サッカー日本代表の岡崎慎司を起用。また「ベラジョン」の無料版では同じく元サッカー日本代表の吉田麻也が公式アンバサダーを務めていた。
奥田氏が続ける。
「広告塔の存在に加え、無料版のCMを流しているメディアも日本からの利用を後押ししています。サッカーの代表戦を独占放送している『DAZN』では岡崎や吉田が出演するCMが頻繁に放送されています。あくまでも合法の無料版の宣伝ではありますが、道義上の問題は残ります」
さらに「若者がオンラインカジノに気軽に手を出してしまう一因になっている」と奥田氏が指摘するのが、インフルエンサーによる「仲介ビジネス」だ。
「近年、XなどのSNSで若者に絶大な影響力を持つインフルエンサーの間では、ファンをオンラインカジノに登録させて紹介料を得る『オンカジ仲介ビジネス』が大ブーム。彼らはオンラインカジノに興じる様子を動画で生配信し、大当たりするシーンを見せつけているため『自分も大儲けできるのでは』とファンを錯覚させているんです。もっとも、生配信でプレイしているスロットなどのゲームはオンラインカジノ業者から宣伝用に提供されたもの。同じように勝てるかは疑問符がつきます」
この紹介がインフルエンサーに莫大な利益をもたらす。
「仲介者には紹介料が入るだけでなく『紹介により登録したユーザーの掛け金の一定割合が恒久的に振り込まれる』という仕組み。オンラインカジノが社会問題化した今、こうしたインフルエンサーの一斉摘発も近いでしょうね」(前出・奥田氏)
オンラインカジノの裾野は広く、闇は深い。