3月2日に行われるGⅡ・中山記念(中山・芝1800メートル)は16頭がエントリーしてきたが、馬券作戦上の最大のポイントは、昨年度のJRA賞で「最優秀マイラー」に輝いたソウルラッシュ(牡7)の取捨にあると、筆者はみている。前提となるのは、今回のソウルラッシュが抱える「4つの不安材料」だ。
第一は、陣営が4月5日にメイダン競馬場で行われるGⅠ・ドバイターフ(芝1800メートル)を「今春の最大目標」としている点である。つまり、陣営にとって中山記念の位置づけはあくまでも、次走へ向けた「試走」であり、お釣りのない「目一杯の仕上げ」で臨んでくることは基本的に考えにくいのだ。
第二は、1800メートルという距離である。ソウルラッシュは中距離からの路線変更(3歳時)でマイラーとしての能力を爆発させたが、陣営は「年齢的にズブさが出てきたため、1ハロンの延長を選択した」と説明している。しかし、7歳を迎えてのこの路線変更が吉と出るかは正直、「走ってみなければわからない」。
第三は、中山の芝内回りというコース形態である。ソウルラッシュには中山の芝コースで3戦3勝の実績があるが、いずれも外回りコースを走るマイル戦でのものだった。中山記念で使用される内回りコースは外回りコースとは全くの別物であり、陣営も「今回はコーナー4つのコース形態がカギになる」と漏らしているのだ。
第四は、別定重量として背負わされる59キロの斤量である。ソウルラッシュは5歳時のGⅢ・京成杯AH(中山・芝1600メートル)で59キロを克服(1着)しているが、今回の中山記念における他馬との相対的な斤量差(1~2キロ差)がどう響いてくるかは微妙だ。とりわけ直線坂下からの、最後の1ハロンでの影響は大きいのではないか。
しかし、このような不安材料があるとはいえ、中山記念にエントリーしてきたメンバーの中で、その潜在能力が抜けているのもまた事実である。そこで注目しなければならないのが、始動戦となる当日のパドックでの様子だ。
前走のGⅠ・香港マイル(シャティン・芝1600メートル)の517キロから10キロ以上も馬体重を増やしてくるなど、好調時のパドックでの気配から見て6分以下と考えられる出来で出走してきた場合は、迷わず「消し」だ。一方、完調とは言えないまでも、8分以上の出来が明らかであれば、「アッサリ」の可能性が十分に考えられる。
ただしその場合でも、取捨を最後に決定づけるのは単勝オッズである。今回、1番人気が予想されるのは前走のGⅡ・毎日王冠(東京・芝1800メートル)で古馬を一蹴してみせたシックスペンス(牡4)。同様に、前走のディセンバーS(中山・芝1800メートル)を快勝したエコロヴァルツ(牡4)も人気になるだろう。
そうした情勢下、不安材料を嫌われてソウルラッシュの単勝オッズが4倍以上つくようであれば、同馬の単勝スイチ(1点)馬券はたちまち乾坤一擲の「逆張り勝負馬券」へと変貌する。
以上の条件が全て揃えば、筆者はコレで勝負してみたい。
(日高次郎/競馬アナリスト)