秋華賞、菊花賞に続き、絶好調のルメールが3週連続でGⅠウィナーとなるのか。はたまた、グランプリホースのドウデュースが巻き返すのか。
10月27日に東京競馬場の芝2000メートルを舞台に行われる「天皇賞・秋」は、当日投開票の衆院総選挙以上に「有権者」を惑わせている。
なぜなら、ルメールのレーベンスティール、武豊のドウデュース以外に、昨年2着のジャスティンパレス、宝塚記念で復活ののろしを上げた皐月賞馬ソールオリエンス、昨年のダービー馬タスティエーラ、大阪杯を勝ったべラジオオペラ、そして3冠牝馬リバティアイランドと、役者がこれでもかと揃っているからだ。
一見、どこからでも馬券が買えるのが今年の「秋天」。しかし、この高いレベルの混戦を一笑に付すのは、東京競馬場を庭とする馬券師ライターT氏だ。
「一昨年3着で昨年4着のダノンベルーガのように、新たな実力馬が本気で挑んでくる伝統のGⅠレース。特に東京競馬場のGⅠでは、かつての着順を巻き返すのはほぼ不可能に近い。これは過去数十年を遡っても同じです。昨年7着のドウデュースの激走はありえないし、2着だったジャスティンパレスの連続連対もちょっと厳しい。ひょっとしたら…なんて考えず、バッサリ切ることです」
無双状態のルメールが騎乗する1・2番人気必至のリアルスティールについても「実に怪しい」とT氏は断じる。
「エプソムC、オールカマーと連勝中で重賞3勝とはいえ、全て1800メートル、2200メートルという非根幹距離。2000メートルの新潟大賞典は惨敗しています。父リアルスティールも1800メートルを最も得意としていました。この馬が2000メートルのGⅠでさらに上昇する要素が思いつかないのです。ルメール騎乗で人気が盛られているなら、切りたいところ。まあ、押さえても3連単の3着でいい」
ならばこの混戦を制するのはどの馬なのか。やはり3冠牝馬リバティアイランドが真っ先に挙がりそうだが…。
「ジャパンカップにやって来るゴリアットにぶっちぎられたレベルスロマンスに、日本馬向きのドバイのコースでぶっちぎられたリバティアイランドは本当に強いんですか。去年のJCではイクイノックスにもちぎられている。つまり、かつてのアーモンドアイやジェンティルドンナのような、牡馬との対戦実績はないに等しい。ならば、上位人気では本命にはできませんよ」
リバティアイランドでさえ信用できないとなると、本命馬はどうなるのか。T氏が上位人気から1頭を挙げた。
「人気上位の中なら、同じ2000メートルの大阪杯で強い勝ち方をして、ちょっと体の緩んだ宝塚記念で3着と実力を見せた、べラジオオペラしかない。父がロードカナロアで、母父が東京2000メートルを得意とするハービンジャー。血統信者ではないですが、レーベンやリバティより人気が低いなら、絶対に『買い』でしょう。なんと言っても、昨年4着だった日本ダービーで最も早い上がりタイムだったのはこの馬。東京の直線コースをぶっこ抜くのにピッタリです」
確かに事前の人気予想では4番人気だが、上位3頭に引けを取らない実績がある。ところがここで、T氏が「裏の本命は別にいる」と、ナゾのひと言とともにほくそ笑む。
「2018年のキセキ、2019年のアエロリットはどちらも6番人気で3着に好走している。この両馬とも、毎日王冠で先行して、早い上がりで馬券になった馬でしたが、秋天では人気の盲点になっていた。今年、同じタイプが1頭います。ホウオウビスケッツですよ。本番も1・2番手で競馬をするはずで、実績馬たちに隠れて人気はないですが、確実にノーマークで力を出せるでしょう。勝つとまでは言わないまでも、3連単には絶対に入れておきたい」
確かにホウオウビスケッツは、逃げた前走の毎日王冠で上がり33秒8で見事に2着に粘り切っている。ノーマークの逃げなら怖い1頭だ。
どうやら秋天の馬券戦略は、べラジオオペラをアタマ(1着)に置き、事前人気予想で8番人気のホウオウビスケッツと、「かろうじて買ってもいい」他の人気馬をミックスした3連単で勝負となりそうだ。
秋の府中で馬券議席を奪い取るのは、どの3頭になるのか。
(宮村仁)