社会

タイ政府がウイグル族40人を中国に強制送還で邦人に「爆弾テロ注意喚起」の厳戒体制

 タイ政府は2月27日、国内で拘束していたウイグル族40人を中国へ強制送還したことを、正式に確認した。2014年に中国からタイへ逃れた300人のグループのうち、48人がウイグル族であり、不法入国の疑いで拘束されていた。プンタン副首相兼国防相は「国内法および国際基準に則って送還を実施した」と説明している。

 タイがウイグル族を中国に送還したのは、過去10年で2度目となる。前回の2015年には送還直後、バンコク・ラチャプラソン交差点のエラワン祠近くで爆弾テロが発生し、20人が死亡。日本人を含む125人が負傷する大惨事となった。

 この経緯を踏まえ、在タイ日本大使館は、テロの脅威が高まる可能性があるとして、在留邦人および渡航者に向けた注意喚起を発出した。観光施設やショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設など、不特定多数が集まる場所では警戒を強めるよう、呼びかけている。

 こうした情勢の変化を受けて、バンコクの旅行業界では不安の声が広がっている。市内で旅行代理店に勤務する男性が肩を落とす。

「最近はミャンマーの誘拐事件の影響で、日本人観光客が減っていると感じていました。それに加えて、今回のテロの脅威。ようやく円安の影響が落ち着いてきたと思った矢先に、また厳しい状況になりました。私たち旅行会社の仕事は、バンコクから地方都市へのバンやバスの手配が中心ですが、その需要が一気に落ち込んでいます」

 オンラインゲームやSNSを通じて知り合った人物から海外での仕事を紹介され、タイなどに渡航した日本人が、そのままミャンマーの特殊詐欺拠点へと連れ去られる事件が起きている。被害者は詐欺行為に加担させられ、ノルマを達成できない場合は暴行を受けるなどの被害に遭っているという。

 タイは観光業が主要産業のひとつであり、日本からの旅行者も多い。しかし、安全面への懸念が高まることで、さらなる旅行控えが起きる可能性が出てきた。政府当局は現在のところ、具体的なテロの脅威情報はないとしているが、過去の事例を踏まえれば、警戒を怠ることはできない。現地の邦人や旅行者は、最新情報を確認しながら安全確保に努める必要があろう。

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