社会

「猫とテレビ」で考える「猫を飼う人はリテラシーが低い」という指摘は本当か

 2月22日は「ニャンニャンニャン」の「猫の日」だった。その前日、猫による2025年の経済効果「ネコノミクス」のニュースが流れた。「ニャンとびっくり」なんていうキャッチフレーズで紹介された金額はなんと、2兆9086億円。およそ3兆円だ。飼い猫数は2024年は36万匹増えて915万匹になったそうだ。1000万匹の大台は目の前。日本が猫大国になる日は近い。

 BSテレ東はここ数年、2月22日に一日中、猫番組を編成して、猫デーとして放送している。地上波でも猫を含む動物番組をいくつも放送して、世はまさに猫ブーム。ネットにも猫記事が溢れる。猫モノは読まれるそうだ。「ニャンニャンニャン」の日は、我が家の3匹の猫も番組にかじりつくように見ている時があった。

 NHKがドラマ「夏目漱石の妻」を放送した際、「吾輩は猫である」を書いた作家だけに、黒猫が登場した。2021年にガンで死んだ我が家のジュテは、ドラマに黒猫が出て来ると、食い入るように見ていた。時々、画面を引っ掻いたりもした。ところが変な手応えゆえ不思議な表情になり、いったん元の場所に戻ってから、次に画面の裏側にヒョイとジャンプ。猫が裏側に隠れていると思ったようだ。

 本題はここからだ。番組を見ていると猫の面白い話、かわいい映像、珍しいアクションの映像などが流れる。猫は面白いし素晴しいし、かわいい。ウチの猫もそんな感じだと共感する。でも、それ以上の感情は湧かず、それ以上でも以下でもない。

 なぜそうなるか。飼い主が抱えている疑問、問題に答えてくれるような番組が少ないせいだと思うのだ。「ごはんに飽きて、別のものをあげると、また飽きる」「1年経っても懐かない」「脱走したらどうやって捕まえるのか」などなど、飼い主の悩みは尽きない。

 しかし、それらに応えてくれる、正面から向き合った番組をあまり見たことがない。それは実際に猫を飼っている制作者が少ないためではないか、と。自分で飼っていなければ、飼い主と同じ悩みを共有できない。正しい仮説なのかはわからないが。

 もうひとつ考えられるのは、猫を飼う人のリテラシーの低さ。個人的にそう思ったことはないが、面と向かって言われ、考えてしまった。リテラシーはひと言でいえば、理解力ということだろう。この場合のリテラシーが低いとは、猫をかわいがっている人は物事をきちんと理解する能力が低い、ということらしい。

 思い当たるフシはある。ネットなどに流れている記事を読むと、他の記事よりも優しい言葉使いで書かれている。そしてハタと思って驚くのは、読者の多くは自分とは異なる考え方や意見に激しく反応し、非難することだ。つまり、自分の考えしか認めない。

 10匹の猫がいれば10通りの飼い方があると思うが、極端な言い方をすれば、そういう人は自分の飼い方しか認めないから、異なる意見の人とは激しくぶつかる。野良猫も地域猫も保護猫も生かすために、ごはんをあげる、かわいがる、それらの手助けをするという、生き物に対する基本からかけ離れた議論に発展するらしい。

「私が発信すると、反論のメールがガンガン送られてきた。怖い」という声は、何度も聞いた。それって、猫の生き方について人間が勝手に決まりを作り、結果的に猫をないがしろにしているだけではないか。実はそういう一部の人におそれをなす風潮がテレビ番組にも反映されていて、かわいい、面白い、素晴らしいと称賛するだけの番組作りになっている気がする。そんな番組はつまらないに決まっている。

 だからこそタブーなく、猫が病気になった話、脱走した猫、検査ばかりする医者、動物保険、食べさせるごはん、排泄物、さらにシッターのことまで、猫を飼っている人の参考になる話はないかと考える。

 経済効果3兆円、飼育数1000万匹を超えそうな勢いゆえ、かわいい、面白いだけではない、社会的なものを含めたいろんな問題がこれから、もっと増えるはずだ。

(峯田淳/コラムニスト)

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