パリ旅行から帰って来ると、猫シッターのSさんにはLINEで連絡、ついでに家に寄ってもらい、留守中の猫たちの様子を聞くことができた。
「ジュテちゃんもガトーちゃんもすぐに馴れて、とてもいい猫(こ)でしたよ」
Sさんの声がしただけで、2匹とも2階から降りてきて、Sさんにスリスリしている。2匹とももともと人懐こいが、いろんな猫をお世話している猫好きのSさんのことは、すぐにわかるのだろう。すっかりお仲間だ。
「送ってきてくれた猫じゃらしで遊んでいる写真。あれはショック。僕らがやっても普段はあんなに飛び上がったりしないから。Sさんはやっぱりうまいね」
ゆっちゃんも「馴れてるよね」と、改めて感心しきりだ。
「Sさんも猫を飼ってるでしょ。何匹くらいいるの?」
そう尋ねると、ニヤッとしただけで答えてくれない。
「3匹か4匹?」
さらに質問すると、また笑っている。「もっと?」と言うと、Sさんが頷いた。察するにかなりの数、多頭数のようだ。
「10匹くらい?」
Sさんは「いやいや」と手を振る。家では20匹、30匹、それ以上飼っているのかもしれない。最後に、
「恥ずかしくて言えません」
とSさん。ゆっちゃんと、なんとなく納得だ。シッターで猫のお世話をして、家でも猫がいっぱいの、猫漬けの日々ということだろう。根っからの猫好き。猫シッターは天職なのだ。
それが2016年のことだ。
Sさんには海外に出かけた2016年、2017年、2019年、2022年の4回、コロナで海外を諦めて国内旅行に出かけた2020年、他に数回、スポット的に1日か2日のシッターをお願いしている。
2016年と2017年はジュテとガトーの2匹、2019年は夏にクールボーイがやってきて3匹お願いし、2021年11月にジュテが死んだので、2022年はガトーとクールボーイの2匹だった。その夏にはそうせきがやってきて、スポット的にガトーとクールボーイとそうせきの3匹をお願いしている。
ジュテとガトー2匹の時はSさんにすぐに懐いたが、クールボーイは人の姿を見ると逃げたり隠れたりする猫だ。普段は人間と距離を保ちながら、ご飯の時だけ「オレにもくれよ」と口先を尖らせて現れる。ジュテ、ガトーとは仲よくじゃれ合うが、猫じゃらしなどで遊ばせようとすると警戒し、近づきはするものの、こちらの動きに敏感に反応して逃げてしまう。
そんなわけで、2019年は3匹になって、クールがSさんにどう反応するのか、興味津々だった。ところが送られてきたLINEには、クールが飛び上がって猫じゃらしで遊ぶ姿が何枚も写っている。これには唖然としてしまった。
「クーがSさんと楽しそうに遊んでいる!?」
「あれ!? 本当だ!」
「なんてヤツだ、いつもは何をやってあげても、フンって顔してるくせに」
「Sさんの猫好きがクーにもわかるのかしら」
「遊ばせ方がうまいのかもね。帰ったらやり方を教えてもらおう」
元気にしているか心配していたのが、バカバカしくなってしまった。それでも楽しそうな姿を見て安心、感謝。
ちなみに3匹になると、2匹の時よりもシッター代が割安になる。従来ベースで計算してみる。
シッター代は2匹までは1時間2700円、1匹追加は500円増し。ガトー、クールボーイ、そうせきなら1時間3200円だ。これに交通費の実費がつく。我が家の場合は900円。1回1時間お願いすれば4100円、2回なら8200円になる。シッティング費用だけなら、1匹あたり1000円ちょっとだ。
今年も10月に11日ほど出かける。シッティング回数は1日2回で合計22回。総額9万200円ナリ。ちょっと前なら海外旅行できる金額といわれそうだが、猫3匹の命の値段と比較することはできない。
気になるのは、末弟そうせきの反応だ。スポットでお願いした時は隠れて姿を見せなかったそうである。飼い主にはベタベタに甘える人懐こい性格なのに、よその人に対しては警戒心が異常に強い。
しかし今回は、11日間の長丁場。はたして知らんぷり、隠れ続けることができるかだろうか。人恋しくなり、我慢しきれずSさんの前に姿を現すかもしれない。
そうせきがSさんの前でゴロニャンしている写真が送られてきたら、ショック…いや、それもまた楽しいかも。(終わり)
(峯田淳/コラムニスト)