猫シッターのSさんに会って、ジュテとガトーのことはお任せして、安心して旅行に出かけることができた。猫を飼っていると、旅行のこと以上に猫が気になるもので、これは飼っている人には理解してもらえると思う。
自宅の鍵を最初にSさんに渡してから、そのまま今も預かってもらっている。いつ何時、急用ができて家を空けるかわからないからだ。Sさんは、紹介してくれたMさんとも付き合いが長い。そこは信頼関係の賜物だ。
旅行に出かける前の晩から、忙しく荷物を詰め込んでいると、異変を感じたジュテとガトーがソワソワしている。その姿を見て申し訳ない気分になる。
翌朝に「Sさんが来てくれるから大丈夫だよ」と声をかけて出発。Sさんにはその日から1日2回のシッティングをお願いしている。
猫たちの様子はLINEで報告してくれることになっている。飛行機内ではつながらないので、旅行先のパリに到着するまで、様子はわからない。
さて、パリに着いて機内モードを解除すると、LINEが立て続けに入る。とにかく見よう。
最初は「これから始めます」というSさんからのメッセージ。まずは家に入った時の、猫の様子から。「?」という表情のガトーがいる。それから空になったごはんの器、砂が乱れているトイレを撮った写真が並ぶ。
「こんなふうに送ってくれるんだ」と、連れ合いのゆっちゃんとLINEに見入る。「これなら安心」と、ホッとした気分だ。
それらから1時間以上経って、次のLINEが送られてきた。猫じゃらしなど、オモチャで遊ばせている写真がいっぱい。細い棒の先にボンボンがついた猫じゃらしに、ジュテとガトーが飛び上がって遊んでいる様子を撮った写真が何枚もある。「ジュテ君とガトー君が遊んでくれました」というSさんのコメントもある。
「ジュテもガトーも、いつもはこんなふうには遊ばないけどね」
「2匹とも別の猫(こ)みたい。遊ばせ方がうまいんだね」
Sさんに感心するばかりだ。
あとでSさんに聞いたら、片方に猫じゃらしを持って、片方でスマホを連写して撮っているとのこと。よく若者が起用にやっているような方法だ。
最後はカリカリをいっぱいにした写真や、キレイにした後のトイレ、飲み水を取り替えた写真が並ぶ。そして「お昼のシッティングが終わりました」というSさんのコメント。シッターがやってくれることをリアルタイムで確認でき、旅先では猫のことは気にせず過ごせそうだ。
お昼のシッティング開始が11時として、時差が7時間のパリにLINEが送られてくるのは、朝方の5時くらい。夕方のシッティング時間が18時として、パリは午前10時くらいになる。旅行中は睡眠が不規則になりがちで、すぐに目が覚めるので、LINEが送られてくると直ちにチェック。猫の様子が手に取るようにわかり、精神安定にはとてもいい。
これが出かけている間中、1日2回報告がある。猫たちは普段よりもご飯を食べるせいか、最後は足りなくなり、カリカリを買い足してくれたようだ。
LINE電話を使って猫に声をかけたりすることもできるのだろうが、その場にいない飼い主の声が聞こえたりしたら猫が不思議がるだろうし、こちらの声を聞いて鳴かれたりしたら、逆にツラくなる。元気なことを確認してヨシとするのが、シッターにお願いした時はベターである。それにしても、便利な世の中になったものだ。
さて、帰国して玄関のドアを開けたら、猫たちの反応はどうだったか。猫にとって人間の1日は、3日に相当するといわれる。1週間なら3週間、10日なら1カ月。ジュテとガトーにとっては、長い長い飼い主の不在だった。
2匹とも、家に入ると最初は遠くからおそるおそる見ていたが、ジュテからは「どこに行ってたの?」と怒っている様子が伝わってくる。置いてきぼりにされたことへの抗議がヒシヒシと…。ガトーはぼんやりした性格なのか、最初は「誰?」というような眼差しだ。それでもしばらくすれば、甘えん坊に戻っていたが。猫シッターに任せて大成功だった。
(峯田淳/コラムニスト)