2024年7月よりタイ政府が導入した新たなビザ制度が「デスティネーションタイランドビザ(DTV)」だ。デジタルノマドやリモートワーカー向けのビザで、申請者は最大5年間の滞在が可能となる。
DTVの申請には、申請者名義の銀行口座に50万バーツ(約250万円)以上の残高証明や、職業を証明する書類の提出が必要だが、長期滞在が可能であり、手続きは比較的、簡素化されている。この新制度により、タイを拠点として働く外国人にとって、より柔軟な滞在が可能になった。
と同時に、このDTVの導入によって、不満の声が上がっている。例えば、これまで高額な学生ビザを取得していた外国人。DTVの条件が発表されると「これまで払ったお金は何だったのか」という不満が噴出。長期滞在の選択肢として学生ビザを利用していた層の一部が、DTVへ移行する動きを見せているのだ。
さらに強い不満を示しているのが、「タイランドプリビレッジ(旧タイランドエリート)」の会員たちである。これは一定の会員権を取得することで5年以上の滞在が可能になる、特別なメンバーシップ制度。2023年10月に新価格が発表され、従来に比べ、30万~400万バーツの値上げが行われた。
つまりは高額な費用を払ってタイでの長期滞在資格を得た人たちにとって、DTVの登場は予想外の展開だったのだ。
DTV導入により、タイランドプリビレッジの入会数は激減したとされる。バンコクの旅行会社に勤務する男性が語る。
「タイランドプリビレッジの入会が減ったことで、DTVはいずれ廃止されるのではないか、という声が上がっています。もともとDTVは、ビザランやノービザで出入国を繰り返すノマドワーカーに対して、ビザ代を払わせるために作られたもの。しかし結果的に、学生ビザやタイランドプリビレッジの取得者が減るのは目に見えていたので、やっぱりそうなったか、というのが正直なところ。タイの状況は1日で変わると言われていますが、まさにその通り。皮肉なもんですよ」
今後、DTVが継続されるのか、あるいは再び制度変更が行われるのか、引き続き注視する必要がある。