昨シーズン、64年ぶりの11連敗、そして0勝11敗という目も当てられない成績に終わった西武・高橋光成が、雪辱に燃えている。
中日とのオープン戦(3月16日)では、5回2安打無失点と好投。前回登板と合わせて8回を投げて、失点はゼロだ。
前回の楽天戦では味方打線が爆発し、初回の攻撃で一挙4得点の援護を得た。そして中日戦でも初回に3連打で2点をもらったのだが、2試合ともに2回以降の追加点が全くなかった。昨年の11連敗の一因は、味方打線の援護に恵まれなかったことにもある。
それも止むを得ない部分がある。高橋は2024年まで、4年連続で開幕投手を務めたエースだ。それゆえエース対決となった試合は少なくないのだが、走者を溜めた場面で「踏ん張る」ピッチングが見られなかった。
昨年はキャンプ中に右肩を痛め、出遅れてしまう。そして直球、変化球ともにキレがなかった。しかし、この16日のピッチングを見る限り、走者を出した場面でも落ち着いて粘り強く投げている。味方打線が取ってくれた先制点を守り抜いた、といった感じだ。
今季もロースコアでのピッチングを強いられそうだが、中日戦で高橋をリードしたのは、ベテランの炭谷銀仁朗。絶不調だった昨年は、炭谷とは1試合しかバッテリーを組んでいない。若手の古賀悠斗、柘植世那が7試合ずつ、パートナーとなった。
「炭谷と組まなかったことに他意はありませんが…」(球団関係者)
経験豊富なベテラン捕手と組ませたのは、昨年の「走者を溜めた場面での痛打」に、西武首脳陣が「勝てないのは高橋のせいだけではない」と思う部分があったからだろう。西口文也監督の「高橋評」が興味深い。
「そこまで(調子が)良くなかったけど、それでもあれだけ投げられたのはよかった」
先発投手の好不調がチームの勝敗に直結する状況は芳しくない。ベテランの知恵で勝った、というわけだ。
チームは世代交代の過渡期にあるが、再建と最下位脱出のカギは案外、ベテランが握っているのかもしれない。若手の台頭が聞こえてこないのは、寂しい限りだが。
(飯山満/スポーツライター)