芸能

ホントーク〈山田詠美×綿矢りさ〉(1)2人の出会いは芥川賞の授賞式

「もの想う時、ものを書く Amy’s essay collection since 2000」山田詠美/2420円・中央公論新社

 芥川賞選評、作家との交友録、料理の話など、山田詠美氏が、作家生活40周年を記念して出版したエッセイ集。「高校時代から、そのライフスタイルに憧れていた」という綿矢りさ氏が山田氏と文壇の熱烈トークを繰り広げる!!

綿矢 山田先生は、私が04年に芥川賞をいただいた時の選考委員のお1人でした。今日は、憧れていた山田先生にお会いできるというだけでうれしいです。

山田 あの時、りさちゃんは「時の人」でしたから。近づけないほどたくさんの人に取り囲まれていて、お話できたのは、ずいぶん経ってからでしたね。

綿矢 緊張して、ちゃんと話せなかったと思います。

山田 あれから20年。今では、一緒に泉鏡花文学賞の選考委員をやる仲になりました。

綿矢 はい。今日は、作家生活40周年記念に出版されたエッセイ集についてお話を伺いたいと思います。

山田 何でも聞いてください。

綿矢 この本には日常のエッセイや作家の方との交友、亡くなった方の追悼文、書評の他、文学賞を受賞された時の言葉や、芥川賞(03年~21年)の選評も載っています。山田先生は85年に「ベッドタイムアイズ」(河出書房新社)で文藝賞を受賞されてデビューされました。先生にとって文学賞とはどのようなものでしょうか?

山田 デビュー作でいただいた文藝賞と、その後にいただいたいくつかの賞とでは、まったく性質が違います。初めて自分の人生を自分の力で変えたのが新人賞である文藝賞だとすると、次作からは、編集者との共同作業で作り上げたという意識がすごく強い。だから、みんなのために絶対に獲りたいなと思いました。

綿矢 受賞した時は、チームで獲ったと感じますか?

山田 はい。それからリスクの分散。ダメだったら、責任を転嫁することもできるので(笑)。でも、選考委員の時も受賞者の時も、文学賞は楽しいイベントだと思います。執筆中は1人で書いているのだから、受賞した時ぐらいは明るく喜び合ってもいいんじゃないでしょうか。

綿矢 選考の時に心掛けていることはありますか。

山田 私も文藝賞を獲ったことが転機になりましたから、受賞者の人生を180度転換してしまう場合が多いことをよくわかっています。ですから、直感で選びながらも、その人のいいところを見つけようと集中します。

綿矢 この本には芥川賞の選評が18年分載っていますが、印象に残っている選考会を教えていただけますか?

山田 やっぱり、りさちゃんと金原ひとみちゃんが獲った時でしょう(笑)。

ゲスト:山田詠美(やまだ・えいみ)1959年東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で文藝賞を受賞しデビュー。87年「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」で直木賞、96年「アニマル・ロジック」で泉鏡花文学賞、01年「A2Z」で読売文学賞、05年「風味絶佳」で谷崎潤一郎賞、12年「ジェントルマン」で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。

聞き手:綿矢りさ(わたや・りさ)1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。01年「インストール」で文藝賞を受賞しデビュー。04年「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞。12年「かわいそうだね?」で大江健三郎賞、19年「生のみ生のままで」で島清恋愛文学賞を受賞。「勝手にふるえてろ」「私をくいとめて」など著書多数。

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