2024年J1リーグ第37節、ジュビロ磐田×FC東京の終了間際のPKは、サッカー界では今も語り草だ。磐田は勝たなければJ2降格が決まるという状況で、スコアは1-1の同点。外せば降格のPKを、山田大記が見事に逆足でゴールに蹴り込んだ。
あの時、裏では何があったのか。昨シーズン限りで引退した山田氏本人が、鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルで、全てを明らかにした。
「外したらどうしよう…としか思っていなかった。前日にジャーメイン良と話をして、いつも彼が蹴っていたので『大記くん最後だけど、明日蹴ります』と言われて、2-0とかプレッシャーがかからなければ蹴るよ、って。試合が決まっていたりすれば蹴る、と言っていた。プレッシャーがかかっていたら頼むわ、と。ジャーメインが外しても、誰も文句言わないから。こんだけ点を取って、活躍してくれて」
PK獲得時のスコアは1-1。まさにプレッシャーがかかる場面だったが、
「いざPKにになって、ジャーメインにどうするか聞いたら『ちょっと足痛いっす』。おいおいおい。でも冗談抜きでひどい打撲をしていたので、じゃあ俺蹴るわ」
こうして山田氏がPKを蹴ることになった。
ここで山田氏は「秘策」を繰り出す。最近はPKのVAR判断中に、ベンチがキッカーの蹴る方向のデータをGKに教えることが多い。
「俺が蹴るとしても、ジャーメインが(ボールを)ギリギリまで持っていてね(とお願いした)。僕は右で蹴るフリをして左で蹴る方がいちばん自信があって、でも読まれたら終わり。なのでジャーメインにボールを持っていてもらって、PKが確定してセットしたタイミングでボールをもらって蹴った」
相手GKに自身のデータを渡させないことで、成功に導いたのである。プレッシャーのかかるPKであり、外してもおかしくはなかったが、
「さすがにサッカーの神様が外させないだろう。そんなにドSじゃないだろうなって。ジュビロサポーター側だったので、みんなも決めさせてくれるだろう。枠に入れようというだけ」
磐田は次の試合でサガン鳥栖に負け、J2に降格してしまうのだが、このPKは今も多くのサッカーファンの胸に焼き付いている。
(鈴木誠)