どうして入れてくれないの――。昼下がりの靖国神社には、相撲ファンの行き場のない悲しみが漂っていた。
4月14日に靖国神社相撲場で開催された「奉納相撲」。昨今の外国人観光客の相撲人気と「入場無料」という敷居の低さで観客が大挙して押し寄せ、昼過ぎには新規入場が締め切られてしまった。悲嘆に暮れていた50代男性が振り返る。
「もとより入場先着6000人で、状況によっては入場制限が行われることは知っていました。ただ、例年は会場への出入りが自由だっただけに、油断してしまいました。関係者や黄色のリボンを付けた『VIP』と呼ばれる、靖国神社にお金を収めた人以外はいちど会場から出ると、再入場できませんでした。取組を終えた力士たちと交流するために、もっぱら『出待ち』に注力しましたね」
もっとも、同じ相撲ファンでも興味の度合いは十人十色。序二段の取組から「弓取り式」まで堪能する者がいれば、単に髷を結ったあんこ型の力士を一目見ただけで大満足の外国人観光客もいる。後者の場合は、関取以上の取組を前に、会場をあとにするケースがチラホラ。それでも新規入場が解除されることはなかった。土俵付近で観戦した60代男性によれば、
「会場は大入りには違いないけど、途中で帰ってしまう人もそれなりにいたから、ゆとりがあった印象です。入れ替わりで観戦客を入れても問題なかったと思いますね。いずれにせよ、朝5時から行列に並んで正解でした。すでに20人ほどの列ができていましたからね。ちなみに力士たちの神対応は、枚挙に暇がありません。大の里や若元春などの人気力士には、取組の前後にサインや写真撮影を求めるファンで人だかりができていました」
無料で力士のファンサービスを楽しめる、唯一無二の巡業。来年以降も、開場前の行列参戦が肝要になるのか。