日本人の旅行先として人気の高い東南アジアのタイで、今年もまた「ソンクラーン祭り(水かけ祭り)」が、4月11日から15日まで開催(写真:バンコク市内ソンクラーン会場付近の様子)。
タイ全土で新年を祝うこの伝統行事には、多くの市民や観光客が水かけを楽しむために街へ繰り出したが、昨年に引き続き、首都バンコクでは安全確保と混乱防止を目的とした規制がより一層、強化された。
とりわけ「路上での水かけ禁止」の方針は2024年に導入されてから定着し始めており、今年はその運用がさらに徹底された。バンコク中心部の公式イベント会場には警備員が巡回し、周囲の道路には水よけ用の柵が設置されるなどの対策が講じられた。バンコク在住の日本人男性が、詳しい状況を明かす。
「毎年ソンクラーンになると、水かけの混乱を避けて日本に一時帰国する駐在員が多いのですが、今年は会場外で水をかけられることがなく、落ち着いて過ごすことができました。ソンクラーンの時期は航空券が高騰することもあり、来年からは帰国を控える日本人が増えるのではないでしょうか」
こうした声は、規制によって市民や居住外国人の生活が守られ、祝祭と日常のバランスが取られ始めていることを示している。
今年のソンクラーンでは、タイ人によるマナー意識の向上が顕著に見られた。「水をかけないでほしい」と伝えれば、素直に応じる人が多くなった、との声が市民から聞かれたのだ。これは政府の啓発活動や、SNSを通じた呼びかけの効果と考えられる。ただし…。
「ルールを無視して無差別に水をかけてくるのは、主に外国人観光客ですね」(前出・バンコク在住日本人男性)
との指摘もある。チェンマイやパタヤなどの人気観光地では、依然として街中での大規模な水かけイベントが続いており、トラブルが報告されている。
ソンクラーンと並ぶ伝統行事「ロイクラトン」においては、すでに会場外での灯籠飛ばしが禁止されている。こうした前例にならい、ソンクラーンでも今後は水かけ行為を明確にゾーニングする方向で、一層の規制強化が検討される可能性が高い。
観光資源としての魅力を保ちつつ、市民生活への影響を最小限に抑える取り組みが、今後のソンクラーンにおけるカギとなりそうだ。