4月から新生活を始めた人も多いこの時期、引っ越しや片づけなどで重いものを持ったり、ふだん運動しない人が急に体を動かしたりして、腰を痛めてはいませんか?
常日頃から腰痛を抱えている人はもちろんですが、ふだんは特に腰に痛みを感じないという人でも、何かの拍子に「ギクッ!」と腰に激痛が走る、いわゆる「ギックリ腰」の危険は、年を経るごとに高まってきます。ただし、ギックリ腰についてはまたあらためて取り上げるとして、今回は慢性的な「腰痛」をテーマとしたいと思います。
いつもと順番は逆ですが、まず先にチェック項目(ページ下部)を使って、自分が「腰痛になりやすい人」なのかどうかをチェックしてみてください。腰痛になりやすい人は、ギックリ腰にもなりやすい、ということですから、当てはまる人はこの機会に、「腰痛」への対策をとりましょう。
【1】と【2】は、背骨の姿勢のチェックです。「腰痛」の最大のポイントは、背骨が曲がった姿勢にありますから、【1】で背骨が左右に曲がっていないか、【2】で背骨が前後に曲がっていないか、しっかりとチェックしてみてください。
股関節が硬い人も腰痛になりやすいので、【3】のような人は股関節を柔らかくするような運動が必要です。【4】に当てはまる人は、もしかしたら相当、腰痛の危険性が高いかもしれません。
【5】以下は、ふだんよくこんな姿勢をしている人は、腰痛になりやすいという例です。思い当たる人は、今は大丈夫でも、そのうち腰痛になる可能性がありますし、いきなりギックリ腰になる危険も常にはらんでいると言えそうです。
「腰痛」とは、背骨やその周りの筋肉の異常などによって、腰に痛みを感じることです。「腰痛」で悩んでいる人は、現在、1000万人にも及ぶとされています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本人の中で自覚している症状の第1位が「腰痛」、第2位が「肩凝り」、第3位が「関節痛」だそうです。
「腰痛」は、“原因不明型”と、“原因ハッキリ型”の2つのタイプに分けられます。“原因ハッキリ型”は、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折などが原因となります。
体を前に傾けると痛むのが椎間板ヘルニアで、腰から足のしびれ・痛み・筋力低下、ひどくなると尿や便を漏らす、といった症状があります。
体を後ろに反らすと痛いのが脊柱管狭窄症で、症状は長時間歩けない、足のしびれ・痛みなど。動くと痛みが増すのが圧迫骨折で、背中が丸くなる、身長が縮むといった症状が出ます。こうした“原因ハッキリ型”の腰痛と診断されたら、自分でどうこうできるレベルではないので、医療機関で治療を受けてください。
逆に言えば、“原因ハッキリ型”は、特徴的な症状があったり、ある動きをすると痛みが強くなるので比較的わかりやすく、病院でもMRIやX線で診断可能なので、対処もしやすいと言えます。
やっかいなのは、“原因不明型”ですね。筋肉や血液の流れなどに異常があるとは考えられていますが、そうなった直接の原因がハッキリせず、MRIやX線でも診断が難しい腰痛です。原因がわからないからなかなかよい対処法を見いだせないことも多いのです。しかも、困ったことに、「腰痛の85%は原因不明型」だと言われているのです。慢性的な腰痛を抱えている人のほとんどは、この“原因不明型”の腰痛ではないかと思われます。
“原因不明型”腰痛の対策としては、やはりふだんの生活面でのくふうが必要になってくると考えられます。とても大事なのは、「姿勢を正す」こと。特にいつも猫背になっている人は要注意。猫背は腰に負担がかかります。寝る時は、あおむけになって、両膝の間にクッションを入れるといいでしょう。マットレスの硬さにも気を配ってください。軟らかすぎるマットレスが腰痛を引き起こすこともあるようです。
また、長時間座る時は、左右に体重をかけ、両足をしっかり地面につけること。腰に負担がかからないような座り方を意識しましょう。重たいものを持ち上げる時は、腰や膝を下に落としてから行うこと。これはギックリ腰対策としても有効です。入浴する時は、ゆっくり入ることも大切です。浴室で身をかがめたとたんにグキッ! となる人もいます。
そして、ふだんから運動する習慣を身につけて、腰回りの筋肉を強くしておくことが重要なのは言うまでもありません。
最後に、腰痛で注意が必要なことがあります。まれではありますが、腹部大動脈瘤、腎梗塞、化膿性脊髄炎、ガンの骨転移などの内臓の疾患が腰痛の原因となることもあります。頑固な腰痛、痛みが日ごとに強くなってくる腰痛で、現在受けている治療で治りにくい場合には、時にセカンドオピニオンを得ることも考慮してください。
──腰痛チェック項目──
【1】鏡の前にまっすぐ立つと、肩、腰の高さが左右で違う
【2】壁の前に立って、頭・肩甲骨・かかとの後ろを壁につけると、腰と壁の間に握りこぶしが入る
【3】イスの真ん中に座って、両足を大きく開いてみても、120度まで開けない
【4】イスに座って、お尻に手を当てると、おなかを突き出したり、へこませたりできない
【5】普段、前屈みの姿勢になることが多い
【6】夜寝る時、横向きで寝ることが多い
【7】電車内で、ドアなどにもたれかかることが多い
【8】猫背だったりして、姿勢が悪いと言われることがよくある
【9】いつも同じ姿勢で過ごすことが多い
【10】運動不足である。もしくは、太っている
※0~3個は経過観察、4~6個は医師に相談を。7個以上は医師の診察を受けてください
◆監修 森田豊(もりた・ゆたか) 医師・医療ジャーナリスト・医学博士。レギュラー番組「バイキング」(フジテレビ系)など多数。ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修も務めた。