「最終リミット」がヒタヒタと迫る中、田中は右ヒジの爆弾以外にも頭痛のタネを抱えている。報道陣が口々に言う「イチロー化」批判である。そもそも「イチロー化」とは何か。スポーツ紙デスクが言う。
「イチローは特定の親しい記者だけに代表質問をさせるスタイル。『顔もあまり見かけないような記者と話すとストレスになる』からだそうです。ただ、マルチ安打するなどして気分がいいと、ロッカー室で囲み取材を受けることもある。グローブを磨きながら『どうぞ』と言って始まりますが、ロッカーを向いて座るので報道陣には背中を向けたまま。で、『それ、答えなきゃいけない?』と、こちらも見ないで言う。‥‥というのが典型的な対応です」
結果、報道陣とは対立し、評判は最悪。そんな態度を見ているチームメイトからの人望も失っていった。田中はそこまでひどくはないというが、
「米メディアの報道にうんざりし、『メディアは煩わしい』と不満を口にする。キャンプ中から『右ヒジの状態はどうなのか』と連日のように聞かれてイライラが募っていました。『みんな、俺のヒジがダメになるのを待ってるんでしょう』と言う始末。今、マー君と米記者との関係は渡米以来、最悪の状態になっています」(球団関係者)
田中はネットで自分に関する現地メディアの記事をチェックするというが、英語が堪能でなくとも日本のメディアがバッシングの事実などを報じるため、内容は把握している。あるいは
「彼は誰なんだ? ニセモノなんじゃないか」「もうそろそろ、彼をかばうのはやめたほうがいいんじゃないか」といった現地の声を耳にして過剰に反応し、周囲に「あんなことを書いて‥‥」とこぼしているという。
米報道陣も完全に田中とは距離を置き、クラブハウスでも「冷戦」が繰り広げられている。在米ジャーナリストが苦笑する。
「通常のロッカー室と、報道陣が入ってこられないプライベートロッカー室があり、投球内容が悪い今季はプライベートにいることが多くなりました。取材可能な練習前や試合後のオープンタイムに通常のロッカー室にいても、米報道陣は遠巻きにうかがい、顔を合わせても質問もしない状況になっています。そんな状況を生むのも、田中のマスコミ対応がまずかったから。必然的に松井秀喜氏と比較されますが、どんな状況でも取材に応じ、気さくな対応を続けて現地のヤンキース担当記者から『グッドガイ賞』を贈られた松井とはまったく違いますからね」
スポーツ紙デスクも同感の意を表して、次のように明かすのだ。
「マー君は楽天時代、メジャーに行く前年あたりから『マー君』と呼ぶ記者の質問にはほとんど答えなくなった。渡米後も、気に入らない質問、野球の技術的な話には答えないことも。登板後の公式会見以外の囲み取材で積極的に話すのはアイドル(ももいろクローバーZ)の話ばかり。野球の突っ込んだ話には『どうなんですかね』『まぁ、それはいいじゃないですか』などとはぐらかすので、何も原稿になりません」
つまりは、日米どちらの報道陣とも関係が悪化しているわけで、
「米メディアからのバッシング報道についても、日本のメディアが質問すると露骨に嫌そうな顔をします。あとで親しい関係者には『同じこと、イチローさんには聞けるんですかね』と憤慨していたこともありました。そもそも田中は日本のメディアに対しても協力的ではなく、昨年の絶好調だった時期ですら、以前から親しかった2、3人の記者としか話しませんでしたからね。別の記者が質問すると『さっきも言いましたよね』と、まともに答えてくれない。まるでイチローのようです。今は結果が出ていないだけに、そうしたマイナス面がよけいに浮き彫りになっている」(在米ジャーナリスト)
田中は親しい日本の記者と食事に出かけることもないようで、試合後はまっすぐ帰宅。
「妻の里田まいが子作りを望んでいるそうです。ダルビッシュが山本聖子との間に子供を授かりましたが、それで里田が『うちも』となっている、と」(在米ジャーナリスト)
右ヒジ同様、対メディアとの戦いもパンク寸前の「リミット」が迫る中、心が休まるのは家庭だけなのだろうか。