12勝4敗、防御率2.51という抜群の成績で、ヤンキースのエースに上り詰めた田中将大(25)に落とし穴が待っていた。右肘靭帯の部分断裂で故障者リスト(DL)入り。「選手生命」すら危ぶまれているのだ。
田中は7月11日(日本時間12日)に戦線離脱。現段階では「トミー・ジョン手術(靭帯移植手術)」を回避し、「PRP」と呼ばれる注射による治療法とリハビリで回復を目指している。
「最短で6週間」という早期復帰を視野に入れているのだ。とはいえ、ヤンキースの球団内では意見が分かれているという。
「『来年の復活にかけて、メスを入れたほうがいいんじゃないか』との声が出ています。『早期復帰してだましだまし投球しても、短命に終わってしまうだろう』との見解です。再発の危険性が残る中での投球となれば、右肘に負担がかかる決め球・スプリットの投球頻度は減るでしょうし、ケアを優先するあまり、威力まで落ちるでしょう。生命線を断たれることを想定し、『これまでのような田中が見られなくなる』と危惧されています」(メジャー担当記者)
今や押しも押されもせぬエースの選手生命危機は、“人災”との指摘もある。
「かつて30億円をかけて獲得した井川慶がまったく使い物にならないという失敗をしたキャッシュマンGM(47)には、同じ過ちが許されません。161億円もつぎ込んだ田中がケガで離脱し、すでに批判ムードも出始め、GMは頭を抱えているんです」(前出・メジャー担当記者)
仮にトミー・ジョン手術をすれば、復帰直後、すぐには本調子に戻らないため、今年ばかりか来年も棒に振ることになる。
「田中の未来を考えれば、手術に踏み切るほうが長く野球を続けるためには最良だと思いますが、キャッシュマンGMが自分のメンツのためにそれを許さない。田中は研究学会に出席しているヤ軍担当医を訪ねただけでなくドジャース、メッツの担当医の診察も受け、3人が同じ結論だったため手術回避と発表されていますが、実は他の医師の診察も受けていて、手術を勧める声もあったのに、ヤンキースの意向でその事実は記事になっていません」(前出・メジャー担当記者)
ヤンキースは高額投資をしているだけに、長期で活躍してほしい一方、すぐに結果も求めているのだ。
ところで、田中の“早期リタイア”については開幕当初からすでに予期されていたという。
「5月に田中と対戦して敗れたレイズのマドン監督は試合後、『彼がスプリットを投げる点を注目している。1年間投げられるか見ようじゃないか』と話していました。他にも、往年の名投手・ハーシュハイザーも『スプリットは選手生命を保てるボールじゃない』と危険性を指摘したうえで、日本メディアに『大丈夫か? 日本でどれぐらい投げてた?』と逆取材をするほど気にかけていた。田中自身は、『そういう声も僕は一切真に受けないようにしてます。自分は自分なんで』と口にしていたのですが‥‥」(在米ジャーナリスト)
そして田中は、スプリットを多投。昨年、田中はスプリットを530球投げているが、今年はシーズン半ばですでに477球も放っているのだ。ここにも“人災”と言われるゆえんがあるという。
「ジラルディ監督(49)がキャンプ時から『決め球を1つ持て』『決め球を使え』と半ば強要する物言いで田中に指導してきた。捕手出身の同監督は、特に12年にポサダが引退して以降、信頼できるキャッチャーが不在となり、みずから投手に注文をつけ、酷使するようになりました。結果、サバシアやイバン・ノバなど故障者が続出した。ノバは4月、まさにトミー・ジョン手術でメスを入れたばかりです」(スポーツライター)
そのうえ、中4日での登板も余儀なくされる、メジャーのローテーションが右肘に負担をかけていたのは間違いない。
「慣れないメジャーのローテも一因ではあるでしょうが、昨年のシーズン終盤から日本シリーズにかけて、楽天・星野仙一監督(67)がフル回転起用したことを持ち出し、スポーツ専門局ESPNは『あの時代の酷使がここに来てツケで出たんじゃないのか』と報じてましたね」(メジャー中継関係者)
人災に人災が重なり、田中は倒れた。はたして、“魔球”スプリットで再び輝きを取り戻すだろうか。