テリー 今年、清原さんにもこの対談に出ていただいたんですね。彼はいろいろなことがあって、つらい思いもしていると思うんですけども、最近お会いされたことは?
桑田 最近はしばらく会ってないんです。引退したあとに「こうしたほうがいいよ」ってちょっと小姑みたいに言っていた時期があって。でもある時電話で話した結果、今の距離感に至りました。
テリー 彼はこの2年半の間、変わったような気がするんです。「桑田と対決した時は、自分の人生の中で今も大きな誇りだし、喜びだ」とも言ってました。
桑田 僕自身も、清原君と出会わなければ今の僕はなかった。彼と出会えたことで、いろんなことを考えて野球をやるようになったんです。
テリー 高校で出会って、いちばん何を感じたんですか。彼は怪物でしたよね。
桑田 まず体格がすごいじゃないですか。いくら練習してもへこたれない体力もずば抜けている。加えて技術もすばらしい。普通、ライバルって「こいつには負けたくない」って思いますよね。でも僕は「清原というすごいライバルから、多くのことを学ぼう」と思ったんです。どうしたら彼からいろんなことを吸収できるかということを、常に考えていましたね。
テリー それは、例えば実際に話しかけて聞いたりしたんですか? 合宿所もずっと一緒だし。
桑田 僕はグラウンドでも学校でもずっと彼を観察するようにしてました。僕、高校1年生から3年間、クラスが同じで席も隣だったんですよ。
テリー へえ!
桑田 僕は、早稲田大学に進学したかったので 授業で一度も寝たことがありません。もちろん眠たい時もありましたけどね。
テリー 清原さんは?
桑田 ずっと寝てました(笑)。
テリー ハハハ。
桑田 先生が起こしても、「俺はもうプロ野球選手になるんやから、勉強はいらんねん」と。そんな彼を見ながら、どんな夢を見てるんだろうなあと思っていました(笑)。野球部の下級生は睡眠時間も短かったので、他の選手もほとんど寝てるわけですよ。
テリー 先生はたまったもんじゃないなあ(笑)。
桑田 清原君はだいたい決まった時間に起きて、「桑田、今何時間目?」「4時間目や」「あと何分? 腹減ったー!」とかね、そんな会話を授業中にしてましたね(笑)。その頃から、誰からも愛される性格でした。
テリー 野球で清原さんに学んだところは、どんなところだったんですか。
桑田 彼は常にパワーに注目が集まるんですが、僕は技術力の高さに注目していました。タイムをかけて「桑田、今日、俺はさっぱり配球が読めへん。どうしたらいい?」と言うから、「1打席目から3打席目までストレートは全部ボール、カウント球と勝負球はカーブやで。お前、まっすぐばっかり待ってるから合ってないんやろ」「そうか、じゃあカーブだな」と。
彼がすごいのは、こんなやり取りをすると、みごとにホームランを打つことです。「桑田、ありがとう。お前の言うたとおりや」と。僕は、狙って1球でしとめるすごさにいつも驚いていました。そういう姿をそばでずっと見ていましたね。