ビートたけしの主演映画「女が眠る時」が、来春公開される。伊豆のリゾートホテルで約1カ月間撮影。7月11日、都内ロケのクランクアップ直後に製作発表会見が行われた。
「不思議なのは、記事、画像、内容など一切を13日朝5時解禁としたこと。速報性で勝負のスポーツ紙の記者は皆面食らっていた。記者会見の案内にもしっかり明記されており、抜け駆けは許されない状況だった。会見が終わったのは11日午後6時前。通常ならネットニュースで夜7時には会見についての一報が流れ始める。だが、情報解禁日を翌々日にしたため、11、12日もただの1行も出てこなかった」(映画ライター)
最近の邦画は製作本数が増え、宣伝費も宣伝にかける人員も削られるばかり。世界の巨匠キタノとて例外ではない。監督作ならまだしも、12年ぶりの主演作といってもどれだけ反響があるかわからなかった。ネームバリューがなかったり、他に大きな記事があれば、いきおい短信扱いされることもざらだ。13日は新聞休刊日。各紙とっておきのニュースで即売を増やそうと知恵を凝らす日だ。より記事は厳選される。で、ふたをあけてみたら、どのスポーツ紙もたけしの記事に大きく紙面を割いていた。
「メガホンを取るのが、ハリウッドの監督だけに情報の扱いにうるさいのかと思ったら、そうではなかった。情報解禁日を設定したことで、ニュースの一挙出しに挑戦、まんまと成功したわけ。一斉報道にしたことで、ライバル紙での扱いがわからず手探りで作るしかない。とりあえず大き目に作っておこうという姿勢だった」(ネットライター)
最近の取材現場の状況を芸能ライターが語る。
「1日3本の現場掛け持ちなど当たり前。だから映画の舞台あいさつや製作発表などは、早めに現場入りし、取材の始まる前に原稿を作りあげておく。発言の部分を空欄にしておき、取材後に入れ込む。それを編集部にメール送信して1本終了。猛者になると、パソコンに向かって発言をそのままブラインドタッチで入力。終わるやいなや次の現場に飛び出していく。高性能カメラのおかげで書くのも撮るのも記者が担当しており、当然出来上がりはやっつけ仕事になる。そんな状況に一石を投じようと考えたのかもしれない」
ベテラン記者が言う。「昔は現場で顔を会わせれば、お茶でも飲んで情報交換したもんです。今は受付を済ませるや、持ちこんだ折りたたみのパイプ椅子に座り込んで、いっせいにパソコンのキーを叩き始める。昼時に長時間の拘束をされても、食事に抜け出す者もいない。黙々と働く姿はまるで羊の群れかと見まがうばかり。たけしの会見は時間的余裕があったせいで、録音した発言内容を聞きなおして、きちんと再録してあった。普段は読み比べると発言内容が違うことが少なくないが、今回はそれがなかった」
世界のキタノは記者の仕事の仕方を変えるきっかけになったようだ。
(塩勢知央)