7月11日、腸閉塞で入院していた落語芸術協会会長の桂歌丸(78)が退院した。今後は自宅療養をしながら1カ月後に開かれる東京・国立演芸場公演での高座復帰を目指すという。落語に人生をささげたその生き様は、まさに不死身の“ゾンビ”。「死にギャグ」も笑い飛ばす男前伝説を紹介しよう!
「桂歌丸」の名を聞いて浮かぶのは、国民的長寿番組「笑点」(日本テレビ系)だろう。1966年の第1回放送から大喜利メンバーとして出演し、現在は司会を務めている。たびたびの体調不良による大番頭の不在について、共演者の三遊亭円楽に話を聞いた。
「本番では歌丸師匠を意識しながら、みんなで安心して観られる番組を作っています。楽屋では師匠の容体に関する話が多く、食欲が戻ってきて400グラム太ったと知らされた時には、新生児みたいだねって(笑)。今はゆっくり休養して、元気になって復帰してほしい」
番組の大喜利コーナーで、「腹黒キャラ」として円楽が歌丸に罵倒を浴びせる掛け合いはおなじみ。例えばこんな感じだ。
円楽 歌丸師匠を車に乗せて。
歌丸 どこ行くの?
円楽 火葬場。
以下は、円楽の歌丸への愛ある暴言の数々。
「車へんに『歌丸』と書いて、霊柩車」
「遺体がしゃべった!」
「歌丸の骨、焼き上がりました」
それでも怒られたことは一度もないと、円楽は言う。
「『下克上・無礼講』が私のテーマ。うちの師匠に対してもそうだったし、『笑点』に参加した時から歌丸師匠に向かって『やるか、ジジィ』って(笑)。本気で言ってたらケンカになりますけど、信頼関係がありますから」
歌丸も番組司会で心がけていることがあるという。ベテランの演芸ジャーナリストはこう語る。
「春風亭昇太や林家たい平といった年の離れた新メンバーが入ったら、『大喜利の舞台に並んだら、皆、同格だから遠慮するな。私をネタにしたけりゃ、徹底的にいじっておくれ』と伝えています」
男前な姿勢はこんな場面でも見られた。4月9日に放送された「あのニュースで得する人損する人」(日テレ系)で、歌丸がかつて“圧力”をかけられたことを明かした。
「笑点」では、大喜利の回答で政治家を風刺することがある。それを不快に思っていた政治家が、飛行機から降りる歌丸を見つけるなり、
「あまり政治家の悪口を言うなよ」
と、すごんできたのだ。すると、師匠はすぐさまこう返した。
「悪口を言われるような政治家になるな」
この返しに相手はぐうの音も出ず、去ったという。