キャンプも終盤を過ぎると、各チームの火種もより浮き彫りとなってきた。今週は、昨季のパ・リーグAクラス3球団のキャンプ地を訪問したが、特に新人監督に対する風当たりが強まっているようなのである。
昨季は悲願の日本一を成し遂げたソフトバンクだが、オフに杉内俊哉(31)、和田毅(31)、ホールトン(32)という計43勝の勝ち星を失ってしまった。
それでも秋山幸二監督(49)はあくまで泰然自若なのである。
「抜けたものは、しかたないじゃん。いる人間でやっていく。いい素材はいるのに、ただ経験がないだけ」
とじっくり構えていた。
一方、王貞治会長(71)は、編成の責任者だけにそうはいかない。
43勝の穴埋め要員として、メジャー通算119勝をあげたペニー(33)を国内外国人選手最高年俸の総額約5億6250万円(出来高含む)で獲得し、こう語ったものだ。
「抜けた穴は外国人で補強するしかない。ただし、外国人は場当たり的な補強。優勝したから今年はいい、というわけにはいかないからこうしたまでで、本来は自分のチームで若手を育てるもの。選手には厳しくなる1年かもしれないね」
とはいえ、昨年14勝の摂津正(29)をはじめ、7勝の山田大樹(23)、6勝の岩嵜翔(22)と期待のホープがいて、そしてペニーとFAで帆足和幸(32)の加入もあった。戦力ダウンが伝えられるわりには頭数がそろっている印象なのである。
だが、キャンプ直前に緊急事態が起きた。守護神・馬原孝浩(30)に肩痛が発生。開幕が絶望視されているのだ。
それでも、秋山監督は、
「戦列を離れるのは昨年もあったから」
と余裕を見せる。
打撃陣に自信があるからこそかもしれない。
目玉は、メジャー64発の怪力・ペーニャ(30)である。
カブレラ(40)と並んで行っているフリー打撃では、ボールがピンポン球のように飛んで、フェンスを軽々と越えていくのだ。それに負けじと契約最終年のカブレラも遠くに飛ばす。お互い、ライバル心に燃えているのだ。
「ペーニャがカブレラにバッティングのことをちょっと聞くと、返ってきた答えは『教えてもらいたかったら、金を持って来い』だった」(球団関係者)
さらには、ペーニャ、カブレラ、松中信彦(38)のDH争いも見ものである。
「オフに、FAで獲得した帆足の“人的補償”のプロテクト枠から外れていたことが発覚して、松中はブンむくれていた。今シーズンに向け、フロントを見返そうと心中期するものがあるはずです。下手すれば、主将・小久保裕紀(40)も安泰ではなく、4人でのポジション争いへと発展するかもしれません」(スポーツ紙デスク)
ベテランの争いと並行して、川﨑宗則(30)の抜けた遊撃で若手ポジション争いが勃発している。
「チームの鍵を握る二遊間はよそから連れてくるのではなく、自前の選手で育てていくべきだ」
という王イズムが秋山監督にも受け継がれ、遊撃で若手を育てる構想だ。
3年目の今宮健太(20)、昨年ブレイクした明石健志(26)、福田秀平(23)、出戻りの金子圭輔(26)の4人がキャンプでアピール合戦を繰り広げている。打撃のケージでも隣り合わせ、守備練習でも常に一緒と、互いに意識させることで、技術向上を狙っているのだ。
そのうえで、秋山監督はこう突き放す。
「プロがいいものを持っているのは当たり前。それを生かして伸びるかどうかが、生き残る道」
競争意識はチーム間の緊張感を呼び、試合で結果を出すよりも、むしろチーム内の争いに勝つことのほうが難しいとさえ言えるほどである。
「使われなければクビになるだけ。不満を言っているヒマはないはず」
と、秋山監督がプレッシャーをかけるから、使われなくなって不満を言い始めていたベテランも、目の色を変えて生き残りに必死になり、穴を埋める若手も一軍切符を前に目の色を変えている。
手薄になったと思われがちのソフトバンクが、宮崎で2連覇に向けて視界良好のようだ。
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