まさに異次元の戦いである。ソフトバンク・柳田悠岐(26)が3割8分3厘、西武・秋山翔吾(27)は3割8分1厘。すでに70試合以上を消化した時点で、パ・リーグ首位打者争いは、打率4割に迫ろうかという2人がデッドヒートを繰り広げている。一方のセ・リーグは、1位の中日・ルナ(35)が3割3分2厘、2位のDeNA・筒香嘉智(23)は3割2分9厘と、その差は歴然としている。
「10年のドラフト会議で、ソフトバンクは秋山を狙っていましたが、王貞治球団会長が柳田を先に指名することを主張。柳田を狙っていた西武が指名し損ね、代わりに秋山を指名した経緯があります。もしかすると、入団する球団が逆だった可能性もあるんですよ」
こう話すのは、パ・リーグ関係者である。意外な縁のある2人は、かつて全日本大学野球の合宿や、侍ジャパンでも共に戦うなど実は仲がよく、頻繁にメールのやり取りをしているという。パ関係者が続ける。
「プロ入り当初、柳田はバットにボールが全然当たりませんでした。でも、あの常識外のアッパースイングを王会長が『打撃フォームをいじるな』と首脳陣に命じ、矯正されなかった。大きく反り返るような姿勢でのスイングは、280キロ前後もあると言われる背筋力を使った打法です」
超高打率を生むそのメカニズムを、コーチ経験のある球界OBが詳しく解説する。
「ボールがバットに当たる瞬間まで右肩が絶対に開きません。右膝が開けば腰も肩も連動して開きますが、そうならないのは下半身をかなり鍛えている証拠」
一方で「夜の下半身」の鍛え方も激しく、
「飲みに行くと、二次会でホステスのいる店に行かないと気が済まない。どんなに疲れていても、誰と飲んでいても、です。でも自分では支払いをせず、スポンサー、関係者、先輩選手などに出してもらう。今年1月、旅行に行こうとした柳田は、先輩に紹介してもらった旅行会社のスタッフをすぐ飲みに誘い、二次会まで全て支払わせた。それを知った先輩は怒っていましたね。それくらい、女好きでだらしないということです」(前出・パ関係者)
対照的に夜遊びもせず、試合のない日も球場に来て練習。デーゲーム後にも室内練習場で練習に励むなど、いたって真面目な性格の秋山について、スポーツ紙デスクは、
「他球団の投手は『どこに投げてもヒットにされる。投げるところがない』と頭を抱えています。スコアラーも同じですね」
昨年、打率2割5分9厘だった男が激変したのはなぜなのか。スポーツライターの分析を聞こう。
「バットを寝かせて構え、グリップの位置も下げました。以前はバットの重さを利用して上から振り下ろし、点でボールを捉えていましたが、今年はグリップを下げたことで、線で捉えるようになった。グリップの位置、左手にほとんど力を入れない構えは、同僚の森友哉(19)の打撃フォームを参考にしています」
結果、田辺徳雄監督(49)が「今まで打てなかったところ、外角と高めの球を打てるようになった」と目を細めているという。スポーツライターが続けて言う。
「秋山は『打率より安打数にこだわりたい』と言いつつも柳田の打率を意識し、毎日インターネットの記事でチェックしています。が、柳田には打率での競争意識はなく、目指しているのはトリプルスリー」
イチロー超えの「年間238安打ペース」だとも言われる秋山。そして柳田は17本塁打、14盗塁と、目標達成に着々と近づいている。
(※記事中のデータは7月2日現在)