公開9日間で興収19億円。2015年公開の実写映画としては断トツのロケットスタートを切ったキムタク主演の映画「HERO」。今春大ヒットした「ビリギャル」が4週間かけてたどり着いた興収に1週ちょっとで追いついてしまっただけに、フジテレビが社運をかけてすがりついたブランドは健在だったと証明された形だ。
しかし、肝心な映画の評判はといえば、それほど芳しい声は聞こえてこない。もちろんこれだけの観客動員数だけに、満点星を付けて絶賛する声も多いのだが、そのほとんどが「安心して観れました」「出演者の掛け合いが面白い」「松たか子さんが復帰したので」「2時間スペシャルでもいい内容だけど、HEROファンなので満足」など、建設的な意見は全く聞かれず終いだ。
一方で、「脚本、映像、演出、全てにおいて新鮮味がゼロ」「注目されるヒットコンテンツなのに、映画ファンを満足させようという意思が感じられない」「しょせんテレビ局の放送コードでしか作られてないから、メッセージが何も伝わってこない」「これで五つ星は酷い」など、辛らつな批判の声も聞こえてくる。
「映画ファンほど酷評、テレビファンは大目に見ているというのが『HERO』の大方の評価です。大ヒットしているからという理由で観賞したドイツ人の記者が『リアルな人物が一人もいなかったし、テーマは社会派を気取っているのに、なぜ架空の国名で誤魔化したりするんだ?』と首をかしげてましたが、これはあくまでドメスティックな人気テレビドラマだからと説明しておきました」(映画情報誌編集者)
単館系映画などで助監督をしているある映画関係者は、「キムタク主演の有名コンテンツというだけで大ヒットですから、妬みも買っているでしょうね」と言ってこう続ける。
「なぜなら、こういった“アイドル映画”は現場(監督など)の権限が非常に弱いため、演技やカメラワークがイマイチでもダメ出しが出ることはほとんどない。仕事もタレントのスケジュール調整や無理やりな褒めちぎりを言わされることを除けば、非常に“楽勝”なんです。そんな“温室”で作られた映画が、あっさり今年最高のヒットを出すのを見ると、映画関係者なら嫌味のひとつも言いたくなりますよ」
「HERO」が8月もこのまま快進撃を続けるかはまだわからないが、キムタクとフジテレビの後塵を拝した映画関係者の歯ぎしりは、どうやらまだ止まりそうにない‥‥。
(藤田まさし)