いよいよ10月にスタートするドラマ「相棒 season14」(テレビ朝日系)では、新たな相棒役を反町隆史が務めることが話題になっている。その反町が演じる4代目相棒の冠城亘は、法務省から警視庁に出向してきたキャリア官僚だ。
冠城はその強い正義感から、法務事務次官を後ろ盾に無茶を通す一面を持つ変わり種というキャラクターだ。だが官僚の知人を多く持つ編集者は、この設定が現実離れしていると一笑に付す。
「たしかに事務次官は省庁のトップですが、法務省だけは事情が違うことを制作陣は知らないんでしょうね。法務省で一番偉いのは事務次官ではなく、検事総長です。さらに次長検事と検事長が続き、事務次官はその下という位置づけなんですね」
とはいえ、かなり高い地位であることには変わりないのだから、法務事務次官が冠城の後ろ盾になっても不思議はないのでは? そんな疑問も同編集者は一蹴する。
「法務事務次官には検察官が就任するのが慣例です。検察官は司法試験に合格して検事になった者のことで、国家公務員試験に合格したキャリア官僚とは別物。それゆえ法務事務次官が、ラインの異なる冠城をバックアップすることはあり得ないでしょう。そもそも冠城のように強い正義感を発揮したいのなら、法務官僚ではなく検察官や警察官僚を目指すはず。人物設定そのものが不自然なんですね」
こういった法務省の特殊性は、一般にはほとんど知られていないところ。たしかに「相棒」の設定は現実には即していないのかもしれないが、それはドラマ制作の上でよくあることだと語るのは、テレビ誌のライターだ。
「相棒に限らず特定の業界を舞台にしたドラマでは、その業界の人から見たとき不自然に見える点がありがち。業界の実情に忠実すぎると、虚構としてのドラマを構築するのが難しくなるからです。警察ものドラマでは、現実ではありえないくらい警察官が発砲していますが、それをわざわざ指摘する人はいません。そのほうがドラマとしてのリアリティが出せるからなんですね」
そう考えてみれば、相棒の前シーズンで3代目相棒を務めていた甲斐亨(成宮寛貴)が、実は連続暴行犯だったというのも現実にはあり得ない話。だがそこも含めてファンは楽しんでいたわけだ。そもそもドラマは虚構を描いているのだから、あまり現実にこだわらないほうが楽しめるかもしれない。
(金田麻有)