80年代には視聴率で他の民放キー局を圧倒したフジテレビ。だが、近年の視聴率低迷で、1959年の開局以来初となる赤字に転落。そのシワ寄せは人気ドラマの撮影現場にまで及んでいた。
フジの中堅社員が言う。
「今年9月までの中間決算とはいえ、社内は騒然としています。3月の本決算までに約10億円もの赤字を広告収入で穴埋めするのは、ほぼ不可能でしょう」
それほどまでにフジの視聴者離れは深刻だ。ドラマに限っても、篠原涼子(42)主演の「オトナ女子」を筆頭に、西島秀俊の「無痛~診える眼~」、松坂桃季の「サイレーン」など、人気俳優が主役を張る秋ドラマは、軒並み視聴率が1桁台と低迷。芸能評論家の平田昇二氏が語る。
「高視聴率女優の篠原でも数字が取れなかったことで、フジのドラマ制作部は完全に諦めムード。現在4つあるゴールデンタイムのドラマ枠を来春までに1つ減らす方針のようです」
その中で、健闘しているのが月9ドラマ「5→9~私に恋したお坊さん~」。第5話までの平均視聴率が11.7%と、唯一2桁の大台に乗せている。ドラマ関係者は、主演の石原さとみ(28)にこう賛辞を送る。
「女性ウケする嫌みのない色っぽさが石原さんの魅力で、第4話では入浴シーンで視聴率アップに貢献しました。撮影現場でもスタジオ入りする際に大きな声で挨拶してくれるので、スタッフが元気づけられます。共演する山下智久さんがふだんは無口なだけに、石原さんの陽気なキャラが励みになるんです」
だが、フジの「赤字ショック」で、石原のドラマ現場にも経費削減の波が押し寄せている。
「これまでにない過密スケジュールが組まれています。タイトルの『5時から9時まで』どころか、撮影は朝9時から深夜2時に及び、それが何日も続くこともあります。確かに撮影スケジュールをギュウギュウに詰め込めば、衣装代や食事代などの経費は浮きますが、主要キャストの拘束時間は長くなる。石原さんの表情にも疲れが見えますね」(前出・ドラマ関係者)
収録が終電過ぎまで長引いても、かつてはスタッフや役者に漏れなくタクシーチケットが配布されていたのだが‥‥。
「今は相乗りが基本です。帰る方向が一緒の人間同士が声をかけ合って、4人1組で乗り場に向かう光景をよく目にします。少しでも睡眠時間を確保したいスタッフの中には、遠回りするのを嫌って自腹で帰る人も」(前出・ドラマ関係者)
役者の演技には欠かせない台本もコストカットのあおりを受けた。
「ペラ紙コピーになりました。いつもはきちんと製本した台本を大量に用意するのですが、部数をケチったために、出演者全員に行き渡っていないのです」(前出・ドラマ関係者)
主要キャストは別として、端役の俳優にはホチキス留めしただけの即席シナリオしか渡されない。この状況を目にした石原は、
「いくら何でも‥‥」
とボヤきながらも共演する若手役者たちを気遣ったという。
「わずかなシーンしか出演がなくても、プロの役者は台本全てに目を通しておくもの。全体の流れを知らないと、主要キャストとのやり取りがチグハグになりかねませんからね」(前出・ドラマ関係者)
あるドラマスタッフは、石原の憤りについて、こう説明する。
「実は、フジのギャラのシステムが変わったんです。これまではどんな端役でも、主役クラスと同様に1話あたりの出演料が支払われていました。ところが、1回の撮影でいくらという計算方法に変更されたことで、1日の撮影で3話分のシーンを撮っても、日当という形でしかもらえなくなったのです。そうしたチョイ役を軽視するような制作方針に、石原さんも胸を痛めているのかもしれません」
フジの代名詞である「月9」がこんなケチケチ現場では、復活への道のりはまだまだ険しそうだ。