昨年の流行語大賞「爆買い」の主は中国人だが、中国政府は近年、海洋に向けて“爆進出”を繰り返している。利権を主張する南シナ海へ人工島を建設するなど強硬路線について、東アジア情勢を熟知する東京新聞編集委員の五味洋治氏が解説する。
「中国は海から攻められて植民地になった過去があり、日本人の何倍以上も敏感です。『海を譲ったら植民地、奴隷になる』と国民は信じ込んでいる。昨年、安倍晋三総理(61)が南シナ海での行動を批判すると、尖閣諸島に船を送って圧力をかけてきましたが、今年はより緊張が増すでしょう」
昨年12月22日には機関砲を搭載した中国公船が尖閣諸島の接続水域を航行。武器の確認は初めてであり、予断を許さない状態が続く。五味氏が続ける。
「日本は中国との海洋安全メカニズムが構築できていない。思いがけないことで日中の船がぶつかり、偶発的な武力衝突も起きかねません」
中国は日本に対し、さらなる「反撃の手」を有していると、五味氏は言うのだ。
「中国国内には戦時中の日本の極秘資料が山ほど眠っています。緊張が増せば、それを公表してくるかもしれない。歴史問題で対立する韓国をも巻き込んでくる可能性もありえます」
中国の隣国、北朝鮮の動向も危険性を増している。5月に予定されている第7回党大会は金日成政権以来36年ぶりの開催となる。その狙いについて五味氏は、
「金正恩第一書記(32)が望むのは、アメリカとの国交正常化です。アメリカに何とか交渉のテーブルに着いてほしいのに、オバマ大統領(54)は聞く耳を持ちません。そこで誇示するのが軍事力です。『遠くまでミサイルを撃てるようになったよ』『どんどんミサイルを増やすよ。嫌でしょ。それなら北朝鮮に来てよ』という交換交渉。相手のほっぺたを叩きながら、会談の場に座らせたい。今は潜水艦から発射する弾道ミサイル(SLBM)の開発に熱心になっています」
SLBMは核弾頭も搭載可能。高度な技術力を要するため、所有国は米、英、中、露などに限られる。
「この技術を購入し、何度も発射実験を行うかもしれません。地上から発射されるわけではないので捕捉も難しい。おまけに北朝鮮の軍事力の実情がつかみにくくなります。北東アジアで一番の波乱となるのは北朝鮮でしょう」(前出・五味氏)
一方、世界を震撼させているのがイスラム国。昨年11月のパリ同時多発テロ後、アメリカ主導の有志国連合によるシリアの拠点空爆が激しさを増している。
「アメリカは民間人の犠牲を出さない方針のため、効果的な空爆はできていなかった。しかし、重要人物であれば民間人を犠牲にしてでも殺すべきだという考えが国防総省に出てきた。(11月の)大統領選挙の予備選挙が本格化する頃を機に、(そうした空爆に)踏み切るかもしれません」
こう予測するのは、テロや中東問題に詳しい星槎大学・佐々木伸客員教授である。そしてイスラム国側にも「新たな動き」が見られるというのだが、
「爆撃でちりぢりになった戦闘員が北アフリカのリビアに第2の拠点を築こうとしています。一昨年は約200人でしたが、今や約5000人と急増殖しています。彼らは再び世界でテロを起こします。特にリビアと距離が近いイタリアが危ない。すでにイタリアには難民として入った工作員がたくさんいるのは間違いないでしょう。FBIもイタリア当局に危険性を通知していますし、今年が最も危ない」(前出・佐々木氏)
現地の邦人が凶悪テロに巻き込まれる可能性は十分にあるのだ。