なぜIS国はここまで「身代金」にこだわるのか。
「世界中から自分たちのイスラム法で統治された、民主主義でない世界を求めている人たち──特に虐げられた人たちが集まってくるので最後の死に場所、あとがないという感じでやっている」(横田氏)
そうした集団がどこから武器を入手し、どのように闘争資金を稼いだのか。黒井氏が解説する。
「特徴としては武装レベルが高い。戦車や大砲を豊富に持っています。いろんな武装集団がありますが、桁違いに武器や弾薬を持っています」
武器は買ったものではなく、紛争地域から奪ったもの。長く戦争の続いたイラク政府軍から盗んだ武器が山のようにあり、それを使っているという。
活動資金は石油の密輸などによるもの。そのビジネスだけで最盛期は1日当たり2億円以上もの収入があったという。
「一番の資金源は略奪です。新しい町を襲撃して、そこで住民を追い出し全て持っていく。銀行、商店のお金、市民の貴金属を持っていくのです」(黒井氏)
また横田氏はこう指摘する。
「サウジアラビアやクウェートからの支援もあります。彼らに賛同するような人たちから非公式に寄付を受けるということですね」
支配地域を急速に拡大したIS国だが、昨年9月、アメリカが支配地域の精油施設12カ所を空爆。攻撃は続き領土を広げることができず、資金収集力にかげりが見え始める。一方、直近の1年で身代金要求により40億円以上稼いだとも言われる。窮したIS国が「誘拐ビジネス」に力点を移したとも考えられるのだ。もちろん、誘拐のターゲットは日本人も例外ではない。横田氏が言う。
「外国人はお金になる。ジャーナリストでも人権活動家でも現地に来る人に例外はありません。許可証なしで入ると確実に誘拐される。私ももし許可証がなければ入国しませんでした」
ツイッター上では2人の殺害予告を受けてIS国をからかう日本人のメッセージが多数発信された。それを読んだ幹部とおぼしき人物はこう宣告している。
「日本人よ、ずいぶん楽観的だな。5800キロ離れていると言ったから安全なところにいると思っているのだろう。我々は世界中のいたるところに兵士を持っている。2人の人質を処刑したあと、お前たちの顔を見てみたいものだ」
IS国はすでに支配地域外のシリア人とヨルダン人を誘拐している。
「中東地域の在留邦人は約1万人。加えて年に10万人ほどの日本人旅行者が訪れます。また、ヨーロッパの各国にはIS国の180人ものメンバーが潜んでいると言われています。当然、そこにいる日本人も誘拐のターゲットになりうる」(中東在住のジャーナリスト)
一方、IS国が脅威なのは世界中で“シンパ”を増やしていることだ。幹部が「日本にいても安全だと思うな」と語ったように、
「04年にはIS国の前身組織であるアルカイダのメンバー4人が新潟に潜んでいたことが明らかになっています。無差別テロなど、日本国内での危険度も確実に上がっているのです」(外報部記者)
“日本人の安全”は、決してこれまでと同じではないのだ。