加えて「外科部長」「教授」といった肩書やマスコミに登場する「名医」という冠も、そのまま鵜呑みにするのは危険だという。
「別にマスコミがだましている、というわけではないんです。ただ、その医者が本当に名医なのかどうかは、一緒に働いてみないとわかりません。現に内科部長や外科部長という肩書があっても、全然仕事ができない人は山ほどいます。だからマスコミで評判の高い名医より、近所で評判の高い名医を選ぶほうがいい。肩書に惑わされないことです」
とはいえ、我々患者は、どうやってその医師のスキルを見極めるべきなのか。その鍵となるのが、医師が持つコミュニケーション能力なのである。
「医者として最も重要なのは、コミュニケーション能力。ところが、現実にはそこが最も後回しにされているんですね。逆に言えば、その後回しにされることをきちんとやっている医者は医学的知識が豊富で、高いスキルを持ち合わせている可能性が高いということです」
医者を見るポイントは難しいことではなく、人当たりのよさや、病気についてわかりやすく説明してくれるかどうかなど「基本的なことがきちんとできるか」という点。つまり人間が相手に対し、本能的に感じる部分を大切にすればいいのである。
「そういうところができていなかったら、すぐに医者を代えるべき。それが殺されないための知恵ですね」
医師との間で思うようにコミュニケーションが取れず、やむなく病院を変えることになった。その場合、「生かされる患者」になるためのキーワードが「紹介状」を書いてもらうことだ。
「紹介状というのは診療情報提供書といって、かかりつけの医師が疾病名などを記載したものです。ですから、これがあるとないとでは、新しい主治医の仕事のしやすさやその適切さが大きく変わってきます。また、通院歴が長いのに『紹介状がない』と言われると、大半の医師は前任の医師と患者さんとの間にトラブルがあったのではないかと思うはず。大きな病院になればなるほど医者にゆとりがなくなるので、そういう人はなるべくお断りしたい。そう受け取られないためには、正式な手順を踏むことが大事になるわけです」
今年4月には医療制度が変わり、紹介状がないと大きな病院の初診料が必ず数千円高くなることになった。この点から見ても、紹介状を書いてもらったほうがお得となる。